デストロイド(ウィスティアリア) ページ36
こん、と硬質な音が響いた。
「問題だねぇ」
『そうか』
「大問題だねぇ」
『そうだな』
──生徒が全員揃わない。
苛だしげに指で机を叩いたウィスティアリアが額を抑えてため息を吐いた。
問題の生徒は学園には登校している筈だが、教室に来る気配がない。放任主義のウィスティアリアは別にそれでも構わないのだが、
『さすがに放置は駄目だろうな。学園長に叱られるぞ』
「...デスヨネー」
頭を抑えてうめくウィスティアリアを眺め、鬼灯はふと顔を上げる。どこからか響くかすかな振動が蛇の体に伝わったからだ。
『主、客人だ』
「あ、まじで? どこのどなた?」
悩む体勢もそのままに尋ねたウィスティアリアに、答えを返そうとした鬼灯の声が届くことはなかった。
『足音からして恐らくせ「失礼しまーっす! デストロイド持って来ましたぁ!」...来たぞ、主』
勢いよく開けた反動で半分ほど閉まりかけた扉をこじ開け、やや小さめのデストロイドを引きずって生徒が入ってきた。
ドタバタと騒がしいそれに流石のウィスティアリアも顔を上げる。
「いらっしゃーい、名も知らぬ男子生徒A...。今回のはまた随分と...、ん? ちょっとそれ人間じゃないの?」
「どうもアリア先生! 俺はAじゃなくてDですけど! 別に人間じゃないですよ、限りなく人間に近いデストロイドです」
そう言って男子生徒A──もとい男子生徒Dはデストロイドを床へと投げ出した。ぐったりと目を閉じて横たわるそれは、どこからどう見ても血の通った人間にしか見えず、ウィスティアリアは首を傾げる。
「どれどれ...。...ああ、目の奥にうっすらと歯車が見えるね。髪もよく見ればタンパク質とは違うモノで構築されているみたいだ」
「ねっ! これはレアだと思って捕まえて来たんですよ! その大変だったこと!」
きらきらと目を輝かせて熱弁する男子生徒Dを無視し、ウィスティアリアはデストロイドを眺めて結論を出した。
「そうだねぇ...、レアなタイプだし、改造のしがいもありそうだ。...まあこれくらいかな」
「うおおおお! 手にかかる重さ...! 今までにない重さに期待が高まるっ...!」
「気をつけてねぇ」
代金の袋の重さに戦慄した生徒が駆けていくのを見送り、ウィスティアリアはデストロイドと向き合った。
「いやぁ...本当に、改造のしがいがあるねぇ。終わったら輝鞠ちゃんにも見せてあげよっかな」
その時のウィスティアリアは、おもちゃを与えられた子供の様だったと鬼灯は言う。
僕と遊ぼー? (ルナ・マリア)→←ストーカー一歩手前(日下部 輝鞠)
4人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
周(プロフ) - 終わりました (2017年1月1日 23時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
周(プロフ) - 更新します (2017年1月1日 17時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新しましたー (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新します (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
歌菜子 - 終わりました (2016年12月21日 20時) (レス) id: beed06bc94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ