甘い香りに包まれて。【短編集】

＊まふまふ：緊張 ページ12

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　約束取り付けてきたよ、そう言われた時間は放課後。

　…あと、授業含めて１時間少し。そんだけあれば心の準備もできるでしょ、なんて１時間でできるなら、こんな時間までうじうじしてないってば。


　「感謝しな？」

　「ありがと…。」


　嬉しいけど嬉しくない。今日ほど授業がゆっくりしてほしいと願ったことは無い。





　「ほら、行っといで。」

　「いってきます…。」


　カバンから、ラッピングしたお菓子だけ持って、約束してくれたらしい屋上に上る。

　…深呼吸を２回。ドアノブを回せばキイッと少しさび付いた音がした。


　「お、おまたせしました。」

　「ううん。大丈夫だよ。」


　にっこり笑うまふまふくんに心音がうるさい。


　「こ、これ、貰ってくれる…？」


　真っ白なリボンでラッピングしたフォンダンショコラ。

　これが１番きれいに膨らんでくれた。


　「ありがとう。」

　…その他大勢と一緒でもいい。

　埋もれたっていい。渡せたから、それでいい。多くは望まない。


　「…これ、本命？」

　「え！？」


　「ね、どうなの？」

　にこにこ笑うまふまふくんに顔に熱が集まるのが分かる。


　「そ、そうです…。」

　「そっか。ありがとう。」


　それは、どういう意味、なんて聞けなくて言葉を探してる間にまた、まふまふくんが口を開いた。


　「僕ね、これ以外、本命受け取ってないんだ。…意味、分かる？」





　本命は君のだけ。


　

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