【HQ】MajiでKoiする5日間 Ⅲ 【月島蛍】 (ページ10)

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56秒思い出ページ10

56秒経過

-A side-

「しっかり掴まっててね、A」

二人乗りは法律違反だよ、お兄ちゃん…

でもまだ脚ぷるぷるするし、槻木澤から烏野まで1人じゃ確かにきついし…

『安全運転でお願いします』

そう言って、お兄ちゃんの腰に手を回す。

ーーーーー

『今日練習だったんでしょ?ごめんね』

青城も今日から合宿だったはずなのに…

「Aのためなら喜んで駆けつけちゃう☆」

シスコンだけど、やっぱりなんだかんだ言って、お兄ちゃんは頼りになるよね。

自転車二人乗りしたくないって思ったこと、心の中で謝る。

『ベストセッター賞とった時、こうやって二人乗りで帰ったよね』

「Aが珍しくなんでもお願い聞いてくれるって言ったから」

『だって、あの牛島さんからはじめて1セット獲ったんだよ?』

懐かしい思い出と、懐かしい背中の温かさで、中学時代の想い出が頭の中を駆け巡っていく。

『…あのね、わたし烏野のマネになったんだ』

「……"あんなこと"があって、もうマネはやらないって言ってなかったっけ」

中学総合体育大会の県予選決勝。

飛雄ちゃんの上げたトスの先に、誰もいなかったコンビミス。

…ううん、あれは彼には着いていかないっていうチームメイトからの拒絶だった。

お兄ちゃんが卒業してから、徐々に表れてきたチームの仲の拗れには気付いてたはずだったのに……

1番近くにいたマネのわたしは、何も出来なかった。

"マネージャー失格"

誰かに言われたわけじゃなかったけど、自分の責任から逃れるように……

わたしは退部した。

『本当はね、お兄ちゃんだけじゃなくて、バレーからも距離を置こうと思って烏野に入ったの』

落ちた強豪、飛べない烏に。

『…でもね、みんなの熱だったり、プライドだったりを近くで感じてたら…』

青城との練習試合後の、飛雄ちゃん、国見ちゃん、金田一くんと話して、過去から前に進まないといけないって強く思った。

『お兄ちゃんがわたしを青城に呼び出してくれたからだよ、ありがとう』

「…本音言うと、俺らのチームで、一緒にウシワカ凹まして欲しかったなあ」

その声が本当に寂しそうで、回してた腕に力が入って、背中にギュッと抱きつく。

お兄ちゃんの背中って、こんなに大きくて、こんなに逞しかったっけ。

誰にも相談できなかった悩みも、今ならお兄ちゃんに打ち明けられそう…

『あのね、お兄ちゃん……実はーーー』

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