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ママがはたちになるすこし前、おばあちゃんはおじいちゃん――わたしは一度も会ったことはないし、名前もどんな姿をしているのかも知らない。――と離婚をしたことは知っている。
ママもおばあちゃんも、その、わたしの知らないおじいちゃんのことをほとんど話さなかったし、ママは今も話さない。
ただ、なんとなく察してはいた。ママは自分のお父さんを、とても憎んでいるってことを。
「あ…――」
そうだ。思い出した。
声を漏らしたわたしに不思議そうにわたしを見るそのひとの顔をもう一度よく見た。そうだ。絶対。
おばあちゃんのお葬式はママがモシュ――あの時は意味を知らなかった。喪主、と書くらしい。――を務めて、こぢんまりと行われた。告別式も。
おばあちゃんもそんなに交友関係が広いひとじゃなかったから、遠くに住んでいたおばあちゃんの兄弟と数人の友達、それからご近所のひとが何人か、あとはママの当時の恋人――ユウサクさんという、ママより歳が五つ歳下のひとで、今はどうしてるのか知らない―とママの職場のひとたちがお通夜に参列してくれた。
こんなに髪の毛は長くなかったし、もっと普通の、黒くて短い髪の毛をしていたと思う。
見た目が違うのもひとつ、それにもう三年も前のことだからすぐには思い出せなかった。
あの時、ひとりでお焼香をあげにきた若い男のひとは、このひとだ。
あの場所で、若い男のひとというだけで浮いていたのに、背が高くて、それに思わず目で追ってしまうくらいかっこよかった。
こういうところ、わたしはまだ子供だと思ってしまうけれど、わたしはおばあちゃんの死を悲しみつつもあのひとが誰なのか気になってしまって、だけどわたしはママに尋ねることができなかった。
「あの…おばあちゃんのお通夜で…、」
わたしがおどおどと言うと「ああ」とすこし目を丸くして、
「覚えてたんや。」
目をゆるやかに細めた。
あの日、ママに訊くことができなかったのはおばあちゃんの死を放心してしまうくらいひどく悲しんでいたと同時に、何か他のことに感情的に腹を立てていたからだ。
その原因がどうやら、このひとがお通夜にきたこととママの実の父親に関係していたことをわたしは今やっとわかる。
「じゃあ、お母さんには俺が来たこと、秘密にしといて。また来るから。」
ママの義理の弟はわたしの目線に合わせるようにかがんでそう言ってから、わたしの横をすり抜けた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、心のこもったあたたかいお言葉ありがとうございます。こんなこと言っていただけるとすこし自惚れてしまいそうだなと思ってしまうほど本当にうれしいです。お礼を言いたいのはこちらのほうです…私は幸さんのコメントにあたたかい気持ちになりました^^ (2019年11月26日 19時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
幸 - 夢見子さんの作品は、何でこんなに引き込まれるんだろう…と、日々不思議に思っています。(笑) ものすごく好きな作者さんです。暖かい気持ちにさせてくれて、ありがとう。私も、夢見子さんのように、誰かを暖かい気持ちにさせられる人になりたいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 碧さん» 碧様、初めまして。お返事遅くなりすみません(涙)そう言っていただけてとてもとても嬉しいです。思うように書けずにいて読んでくださっている皆さんには申し訳ない気持ちですが…あたたかいコメントを糧に頑張ろうと思います!ありがとうございます! (2019年4月7日 0時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 初めまして。すごく楽しみに読ませて頂いています。夢見子さんの作品はいつも切なくて温かいものばかりで、大好きです!応援しています。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: d6c70f3491 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 翠穂さん» 翠穂様、お返事大変遅れてしまってごめんなさい…!そしてあたたかいコメントありがとうございます(涙)すこしずつしか更新ができていませんが今後の展開も見守っていただけるとうれしいです! (2019年3月25日 12時) (レス) id: 742d92b89e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年1月30日 0時