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日直の放課後の仕事は教室のゴミ捨てと、黒板を綺麗にすること、それから日誌で、すべてが終わったら日誌をふたりで担任に届けにいかなければいけない。


わたしが日誌を書く間、錦戸くんは自分の机の上に浅く腰掛けて、携帯をいじってた。真っ青な携帯。女子みたいにキーホルダーとかは、まったく付いていない。


わたしはなるべくさっさと手を動かしながら、だけど錦戸くんとわたししかいない、夕陽が差し込む教室の静けさにちょっとだけ緊張もしてた。


すごく遠くのほうでそれぞれの部活動の音が聞こえるけど、教室はしんとしていて、錦戸くんがたまに携帯のボタンを打つ音だけが聞こえる。



「金曜、」


だから、もう一度錦戸くんに話しかけられた時、すこしだけ安心した。

わたしは手を止めて、顔を上げてとなりの席の錦戸くんを見上げる。



「金曜、大丈夫やった?」


錦戸くんは右手で携帯を持ちながら、こちらを恐る恐る伺うみたいな控えめな視線をこちらに向けていた。


「家の鍵、忘れたって言うてたから…。」


わたしがすこしぽかんとしていたら、付け加えるみたいにさっきより萎んだ口調でそう言う。

錦戸くんの声はちょっとだけ掠れてて鼻にかかったような独特な声。でもそれが、端正な容姿とぴったりな気もする。


「ああ…うん。近くに住んでる親戚の家に泊めてもらった。」


ちょっと、鼓動が速くなる。

あの日、忠義さんの家に泊まったということを口にするのは初めてだったから。


それと同時に、ちょっと眉をひそめた錦戸くんにわたしは焦った。ママが夜遅くまで仕事をしてるってことを遠回しに言ってしまったようなものだ。


だから、さっきの錦戸くんみたいに、

「うち、母子家庭でママが夜まで働いてるから…。」

慌てて、早口でそう言った。



「…そうなんや。」


錦戸くんは小声でつぶやいて、瞬きをする。

睫毛がばさばさと動いた。睫毛が女子顔負けの長さで、黒々としてる。


「…うん。」


それでまた、会話が途切れて静寂が戻ってきた。



やっぱり、錦戸くんとの会話はそんなに続かない。錦戸くんはまた携帯をいじり始めて、わたしは日誌を書くことに意識を戻す。



わたしが鍵を忘れたってこと、覚えていて気にかけてくれるなんて、錦戸くんはママよりやさしいなって、ほんの一瞬頭をかすめて、そういう自分がすごく嫌だった。







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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、心のこもったあたたかいお言葉ありがとうございます。こんなこと言っていただけるとすこし自惚れてしまいそうだなと思ってしまうほど本当にうれしいです。お礼を言いたいのはこちらのほうです…私は幸さんのコメントにあたたかい気持ちになりました^^ (2019年11月26日 19時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
- 夢見子さんの作品は、何でこんなに引き込まれるんだろう…と、日々不思議に思っています。(笑) ものすごく好きな作者さんです。暖かい気持ちにさせてくれて、ありがとう。私も、夢見子さんのように、誰かを暖かい気持ちにさせられる人になりたいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 碧さん» 碧様、初めまして。お返事遅くなりすみません(涙)そう言っていただけてとてもとても嬉しいです。思うように書けずにいて読んでくださっている皆さんには申し訳ない気持ちですが…あたたかいコメントを糧に頑張ろうと思います!ありがとうございます! (2019年4月7日 0時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
- 初めまして。すごく楽しみに読ませて頂いています。夢見子さんの作品はいつも切なくて温かいものばかりで、大好きです!応援しています。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: d6c70f3491 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 翠穂さん» 翠穂様、お返事大変遅れてしまってごめんなさい…!そしてあたたかいコメントありがとうございます(涙)すこしずつしか更新ができていませんが今後の展開も見守っていただけるとうれしいです! (2019年3月25日 12時) (レス) id: 742d92b89e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年1月30日 0時

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