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その夜、夢を見た。
あまりにぼんやりしていてよく思い出せないけれど、わたしは昔住んでた家にいた。ママが昔の恋人と別れて、こっちにくるまで住んでいた家。今のアパートよりすこしだけ広くて、明るい部屋で、わたしはわりと気に入っていた。
そこにママとおばあちゃんともうひとりのわたしがいて、穏やかにたのしそうにご飯を食べてた。
わたしは、テレビを見ているみたいに、それを眺めるだけでそこには加われなくて。
だけどわたしはひとりぼっちではなかった気がする。
目を覚ますとタツくんの家の寝室のベッドの中で、なぜだかほっとしたような気持ちになった。
窓の外はびっくりするほど明るい。
わたしは起き上がってベッドから抜け出し、それから携帯を開く。8時40分。メールが一件だけ。錦戸くんから。
メールはあとで見ることにして、そうっと居間に続くドアを開けた。
タツくんはソファの上で眠っていた。
ふたりがけくらいの大きさのソファにタツくんの身体はおさまってなくて、長い足は投げ出されている。
外からの日差しがカーテンの色を通してタツくんの肌はうす水色に見えた。
眠っているタツくんはなんだか、とても浮世離れしていて、こわいくらい綺麗で、知らないうちに息をひそめてしまう。
しばらく見つめてから、眠っているひとをそんなに見るのはいけないような気持ちになって、わたしは洗面所に向かった。
夜のうちに洗濯させてもらった制服のブラウスや靴下なんかはもうすっかり乾いていて(タツくんの家の洗濯機は乾燥機もついている)、それらを取り出して簡単に畳む。
昨日のことを思い出すと、胸がざわざわとした。
ママのことも、錦戸くんのことも、タツくんのことも、ぜんぶ。それをすべて並べて考えるのは途方に暮れそうで、畳んだ洗濯物を持ったまますこし目を閉じる。
「おはよ。」
背後から声がして振り返るとタツくんがいた。起きてたんや、とつぶやくタツくんの目はどこかまだ眠気を帯びている。
「ちゃんと乾いとった?それ。」
「うん。ありがとう。」
「シャワー浴びてもええ?」
「あ、うん。ごめん。」
タツくんは長い前髪を無造作にかきあげて、わたしの背後にある浴室に目配せをしたから、わたしは慌てて道をあける。
「朝メシ、家食べるもんなんもないからファミレスな。」
わたしの前を通り過ぎるときに、タツくんはまたいつものようにおおきな手を一瞬わたしの頭の上にのせた。
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蒼 夢見子(プロフ) - もんさん» もん様、しばらくぶりの更新にも関わらず読んでくださりありがとうございます…素敵な感想までいただけて嬉しいです…(涙)気まぐれな更新になってしまっていますがお付き合いいただけるように更新頑張ります…! (2022年2月6日 14時) (レス) id: d76122eb40 (このIDを非表示/違反報告)
もん(プロフ) - 更新とても嬉しいです、蒼さんの作品がどれも切ないのに心が暖まって大好きです。 (2022年2月6日 1時) (レス) id: 88e425fb34 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 日玖さん» 日玖様、コメントありがとうございます。(お返事がひどく遅れてしまい申し訳ありません…)そう言っていただけてとても嬉しいです。更新が途絶え気味ですがなんとか最後まで書けるよう頑張ります…! (2022年2月5日 16時) (レス) id: 0bca9b395c (このIDを非表示/違反報告)
日玖(プロフ) - コメント失礼します!つい先日このお話にたまたま出会い、あまりにも好きすぎて一気読みしちゃいました……!続き、楽しみにしてます。これからも応援してます! (2021年10月12日 11時) (レス) id: bbffd7f7da (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - しずくさん» しずく様、初めまして。コメントありがとうございます。書き始めてからたくさん時間が経ってしまい更新も気まぐれで申し訳ないですが、あたたかいコメントいただけて本当に恐縮です。これからも読んでいただけるよう頑張ります! (2021年7月19日 20時) (レス) id: 7499a18546 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年12月5日 23時