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煙草を指で叩くとステンレスの灰皿に灰が落ちていった。

アルバイトは別に嫌いではないけど、退屈やと思う。不用意に無愛想にするわけにもいかないし、わりと外ヅラが良くできてしまう(と、自分では思ってる)のが俺の悪いところで、接客は疲れる。


煙が昇るほうへ視線を上げると、天井の蛍光灯がもうすぐ切れそうに端の方が点滅していた。

休憩に入る前に窓の外を見たとき、まだすこし、明るかった気がする。ちょっと前まではこの時間は真っ暗になっとったのに。

すこしずつ長くなる日。夏のことを考えると気が滅入りそうになった。



「タツー、ちょっとええかぁ。」


おおきい声と共に乱暴に部屋のドアが開かれて、信ちゃんが入ってきた。

信ちゃんに中華屋の白い服はよう似合うな、といつも思う。


「ちょっと相談言うか頼み事なんやけど、」


「…なに?」


俺は煙草を灰皿に押し付けてから、信ちゃんを見上げた。

髪の毛をまとめていたゴムを取って、もう一度結び直そうとうなじから髪の毛をすくいあげる。



「お前シフトもう一日増やせへんか?」


信ちゃんはきっぱりとそう言った。澤口がな、と続ける。


「しばらくバイトの日数減らしたいんやて。ほら、あいつ次4回生やろ?しばらく就活で忙しいらしいねん。」


就活。そういえばそんなものあったわ、なんて自分とはまったく無関係のもののように思い出された。

まとめた髪にゆるくゴムを巻きつけた。誰に言われたわけでもないけど、あんまり念入りにやると女みたいやから、いつも多少雑に結んでいる。


「俺も就活せなあかん歳やけどな。」


「する気んなったんか。」


眉毛をあげて目をめいっぱい見開く信ちゃん。

大学に入ってからゆるやかに堕落していった俺に自分の父親が営むこの店で働くことを勧めてきたのは信ちゃんやった。


「どうやろ。」


他人ごとのように首をかしげた俺に、信ちゃんは呆れ笑いを浮かべてため息をつく。


「どうせ研究もぼちぼち、家におんねやろ?せやったら、頼むわ。」


「…何曜?」


「金曜や。」



ごく自然に、無意識に、俺はわずかに快く承諾することを躊躇していた。



「なんや。金曜、あかんか。」


「いや…大丈夫。来週から?」


「すまんな。よろしく頼むわ。」



金曜日。金曜日の夜。あの子のことが、頭に浮かんだ。





。→←「おのおの、夕暮れ」



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蒼 夢見子(プロフ) - みぃちゃん。さん» みぃちゃん。様、お久しぶりです!いつもコメント下さりありがとうございます…!1,2通しても登場人物たちの気持ちの変化があまりにも微動すぎて申し訳ない気持ちになりますが、3はもうすこし動かせると思うのでお待ちいただけるとありがたいです^^ (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - なのはなさいたさん» なのはなさいた様、初めまして。更新頻度もすくなく、物語の展開もおそい退屈な話ですが、読んでいただけてうれしいです…。ありがとうございます(涙)引き続き楽しんでいただけるようにがんばりますね!! (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん。(プロフ) - お久しぶりです!今回もワクワクしながら読ませて頂きました^ ^ いったい、みんなの気持ちがどんな風に動いていくのかなぁ…と思っています〜また読み返しながらゆっくり更新待ってます^ ^無理せず頑張って下さい! (2019年12月3日 0時) (レス) id: 45454de63e (このIDを非表示/違反報告)
なのはなさいた(プロフ) - 初コメです!いつも楽しみに読ませてもらってます!これからも応援しております(o^^o)更新ゆっくりでもいいのでお待ちしてます! (2019年11月30日 13時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - さらささん» さらさ様、あたたかいコメントありがとうございます。えっ3回も飽きずに読んでくださっているのですか…(涙)とてもうれしいです…これからも頑張って書いていこうと思えます…こちらこそ、ありがとうございます! (2019年9月17日 8時) (レス) id: 1f320f9766 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年5月8日 23時

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