Jack Pot �� T ページ10
宮田は天才詐欺師だ。
ライブで指を骨折した時もメンバーにもチームにも言わず、黙ってツアーを最後までやり通した。
知っていたのはマネージャーと俺だけ。
他には突き指したと言ってあった。
『言ったところで、ライブを続けることには変わりないしさ。みんなに余計な気を遣わせるの嫌じゃん。』
左手だから助かったわ〜なんて笑ってるけど、ダンスしてれば右も左もない。痛み止めを打ってはいても、あれだけ振り回せばかなり痛いはずだ。
てかそもそも、ダンスしてて自分の手に自分の指先ぶつけて骨折するって、意味が分かんない。
『恥ずかしすぎて言えな〜い！』
でしょうね。分かる。だけどさ。
俺たちのお仕事は常に怪我をする可能性に満ちている。
まず、俺たちローラースケートアイドルなんでね。ステージから落下はよくあるし、擦り傷、青アザ、マメ、捻挫……そう言えば、俺は特殊効果の火花で顔に怪我したこともある。
そんな怪我の中でも、骨折はやっぱり結構なインパクトだ。指とはいえ、仕事に影響出るのが普通…なんだけど。
ま、詐欺師というか、俺の旦那は職人気質。アイドル職人なんです。
ライブ中に骨折した自分が許せないとばかりに、マネージャーに絶対内緒ねと笑顔で迫り、石膏で固めるのもやんわりお断り。
人前では突き指だからとサポーターのみ。
カメラ前やライブでは全て外して全力投球。
ファンが心配するし、手の表現に邪魔だからとテーピングさえしない。宮田の美しい肌の大きなお手手、割とフェチいるからね。
とにかく、いつも通りに。
俺？俺は嫁だから。俺にも黙ってたら殴るし。
仕事が終わったら宮田の指に湿布を貼り、医療用金具を着けて包帯で固定する作業は俺の役目。固定すると少しは痛みがマシだって。
『キャッチャーミットみたい。』
『とにかく固定できればいいの！』
ぐるぐる巻きになっちゃうけど、どうせ明日にはまた外すんだからいいの！
『痛いよね…？』
『痛いよ？だから、おまじない頂戴。』
にひゃりと笑う詐欺師。……またか。
『……ったく、しょーがねーな〜。』
包帯の上から軽く唇を当てて、それからおでこに、ほっぺに、お鼻に……顔中にキスして。
最後に唇に唇を重ねて呟く。
『……痛いの痛いの飛んでけ〜。』
『…ん。飛んでっちゃった……。』
くふりと笑い合って、唇を啄み合って、それから……。
これで痛みを忘れられるなら、まぁ、いくらでもしてあげるけどね？
fin.
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作者名：みあん | 作成日時：2021年5月11日 23時
