Please Your Bet. �� T ページ4
『宮田は優しいよ。怒ったとこ見たことないんじゃないかな。』
と、昔から雑誌のインタビューとかでは答えてるけど、実は何回かある。
怒鳴られたのはデビュー前１回だけ。
舞台の楽屋で宮田の髪燃やした時くらい。ヘアスプレーでメイク後だったから、思いのほか火が出てびっくりした。髪が長めの時期だったから、肌まで到達せずに済んだけど。流石に危ないし、今から舞台で穴空ける訳にはいかないしで、すっごい怒鳴られた。
だって塚さんやさくまとかと話すのに夢中で、俺に構ってくんなかったんだもん。
昔はニカ千が急に悪戯したりするとブレーキ効かずにパッと怒鳴ったり突き飛ばしたりもあった。俺の悪戯には寛容だから、弟組はつい甘えちゃってたし。
《やめろっ！テメェっ！》
なんて、巻き舌で結構怖い言葉も使えるけど、いつしか驚異の精神力で一切出さなくなった。チームの雰囲気悪くなるし、威圧感出ちゃうからって。
今では余程特別なことでもなければ、普段は宮田は激しく怒鳴ったりしないし、モノに当たることもない。
《ま、そういうこともあるよね。》
とか
《え？理解できないんだけど〜？》
とか
《まあ、別にいいんだけどね〜！》
とか、そんな感じでのらりくらりと自分の怒る感情をかわしている。
自分の中の怒りを起こさないように、上手に自分を宥めてるの。怒っても得はないし、怒った自分がどうなるか分かっているから。
けれどその分、本気で怒った宮田はちょっと怖い。そして冷たい。
というか、もう考えただけで震える。
静かに、無表情で怒るの。実は腕力もあるから、多分本気でキレたら俺でも止められる自信はない。
昔、ちょっとだけ怒られたことあるけど、あの時は足が竦んだ。
《裕太……？》
って、髪の毛鷲掴みにされて、静かに耳許で囁かれた名前の冷たさに背筋が凍った。
俺が何したかって？……それは内緒。
俺は笑顔の宮田がいい。
優しくて可愛くて。思い出す度に心が温かくなるような、大切な笑顔。いつも思ってる。
だけど、心の奥底には冷たくて怖い宮田に強く惹かれる自分もいる。
あの澄んだ美しい氷の瞳を、静かな狂気を孕んだ闇色の瞳を、また見たくなる時がある。
だからかな？妬かせてみたり悪戯したりしたくなるのは。
ま、絶対崩せないけどね〜。
機嫌が悪くなった顔なんて、俺にしか見分けられないくらい鉄壁の守りだから。
…ねぇ、俊。
その闇をも愛おしく思うのは……罪なの？
fin.
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作者名：みあん | 作成日時：2021年5月11日 23時
