I need you！ vol.2 (ページ19)

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Jack Pot Ⅷ M ページ19

『この春のメイクはシャイニーな温かい色が素敵なんだけど…宮田さんはオレンジ！マットにして唇の形を出そうかな。』

目を閉じてメイクアップアーティストの方にメイクをしてもらいながら耳を傾ける。まぁ自分でここまでメイクすることは、まずないけど。

毎月俺たちのグループがお世話になっている女性誌の７人企画。
今回のテーマは《新しい美》。男性の俺たちが一歩踏み込んだメイクをすることで、新しい俺たちの顔やヘアメイクの楽しみを見つけてもらうというコンセプト。
アイシャドウやチークに口紅、女性のように華やかに、けれどあくまで男性としてのカラーで。

目を開けてびっくりした。
女装は何度か経験済みだけど、今日のメイクは派手すぎず女性になりすぎず。ギリギリのラインでウィッグもつけない。

確かにそれは、新しい俺だった。

メイクは顔のアートなんだなと再確認する。
美容器具とかで、お肌の手入れやってて良かった〜。

褒められてお礼を言い、撮影衣装に着替える為に立ち上がると、あちらの広い鏡の中にタマを見つけた。
衣装はもう身につけて、最後にアクセサリーを選んでいる段階だ。歪な形の小さなパールのネックレスをスタイリストさんがタマに付けてくれていた。

こちらを向いていないが、鏡の中のタマの顔は、ハッとするほど綺麗で…。
俺は思わず立ち尽くす。

俺よりも薄いくらいのメイクなのに、その輝くような美しさに、一瞬で心ごと持っていかれた。

………ああ、また、恋に落ちる。

俺は、君に何度恋をすればいいのだろう。

『玉森さん、綺麗！このオレンジパールが一番メイクに映えますね。』

スタイリストさんの感嘆の声に、我に返って身じろいだ俺と視線を上げたタマ。
鏡越しに２人の目が合う。
タマは俺を見て少し驚いて、それから少し微笑んだ。

『おほ、綺麗じゃーん。誰かと思った〜。』
『タマ……綺麗。』

そう言って、鏡の中のタマに微笑んだ。
少し赤くなったタマは鏡の中で煌めくアイメイクの目を逸らせた。

『他のメンバー見た？すっごいよ。』
『事務所に秘密でバーでもやるか！』

冗談を言いながら、俺は鏡のタマからやっと視線を外して着替え始める。
照れた目許にキスしたくなったのは内緒だな。

『…ん、本当、宮っち綺麗よ？』
『タマさ〜ん、口説いてんの？』

着替えながら笑って顔を上げれば、今度は俺を映す鏡の中に俺を見つめるタマ。
その顔は……きっと。

君も、俺に何度目かの恋をしてくれた顔。

fin.