ひとくふう荘14 (ページ25)

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でも、このお家に誰かを埋めたような匂いはしないし、そんなことしてたとしても僕が匂いを感じないほど昔のことだと思う。

それにね？それだと人間の今のお約束では、サツジンしたってケイサツ屋さんに捕まって怒られてカツどん食べさせられてみんなでお話し合いして高い壁の中で同じお服着た皆さんと喧嘩して過ごさなきゃいけなくなるんだよ。

お父さんとてれびで見た！そういうゴクドウ屋さんの映画。

でね。酷いことしたり何人もサツジンするとシケイしてご自分の命を差し出して謝らなきゃいけないの。ハリツケゴクモンっていうんだよね？

……お父さん、そんなことしてないよね？…ね？？

みんながごくりと息を飲む音。
こおひいの匂いがゆっくりとごはんの匂いに押し負けていく。

……こおひいさん、もう少しココにいて？
しっかり冴えた頭で聞きたいの、大切なこと。
アヤカシさんたちがみんなお人好しなはずない。お父さんは一体どんな対価を払ってきたんだろ。
ヒトバシラじゃないといいけれど。

『じいちゃん、いっぱい訊きたいことはある。
でもとりあえずこの２つは絶対に聞かせてほしい。
１つは式神さんたちにどんな交換条件を提示すれば協力してもらえるのか。
２つめは《たま》の力を甦らせる方法。弱ってきてるんだよね？じいちゃんは………ドンブリをどうするつもり？』

聞いたことないほど、静かでゆっくりな低いお声でタマさんがもう１度訊ねた。
お父さんがハッとお顔をタマさんに向けた。
僕にも分かるくらい、そのお顔は見る見るうちに青ざめた。

『………なんで…。』

『キツネさんが自分の仕えている神様に聞いてきてくれた。
ばあちゃんが亡くなった時に、何故か《たま》の力が弱くなっていると気付いたからドンブリを選んで育ててきたんだって。神様たちがドンブリを選んで、その魂を《たま》に移すことで力を甦らせる為に。』

お父さんのお目目はゆっくりと僕に向けられた。
お父さんのそばに伏せていた僕もお父さんを見つめた。
お父さんの後ろにあるちっちゃなおぶつだんに供えてある紙のお花が、やけに色鮮やかさを増した気がした。

『ドンブリ……お前の目は澄んだ瞳やな、いつ見ても。』

お父さんだって綺麗なお目目。
タマさんと同じ榛色の澄んだ色。

『…まず１つめの質問に答えよか。
式神はんはな、借りる力が大きいほど代償も大きくなるが、相手との交渉次第や。』

キタヤマさんがお父さんのお言葉に合わせてまたパソコンを打ち始めた。