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Which? T ページ10

あれ宮田じゃね?…なんて声が聞こえた。
先にパンフ買って席に座ってた俺…思わず読んでたパンフで顔を隠す。
……いや、バレんの早すぎんか、宮田?


今夜は映画デート。
バスケのアニメとガヤの映画観ます。

バスケのほうは昔TVで毎週放映してたアニメでさ、家族で見てた!
それが新たに映画になると聞いたらそりゃ観たいよね。でも結構忘れてたからTVシリーズ全107話もう1度見直した!…ってくらい楽しみだったの。

なのにいきなり顔バレ?


でも、宮田はリアクションをなんとか堪え、両手いっぱいにLサイズのポップコーンとLサイズのコーラを抱え階段を上がってきた。


『……焦った〜。今《宮田だ》って言われちゃった。』
『いやデカくね?』
『だってタマがポップコーン好きだし、晩ご飯まだだしぃ…2人なら絶対これくらい喰えるって!』


で、俺にポップコーンが溢れんばかり入った紙バケツを持たせた宮田は携帯を取り出す。

『ハイ、チーズ。』

微かに鳴ったシャッター音にまたビビったけど、宮田はサッと携帯をポケットに突っ込み席に座る。

『Lサイズ記念の1枚ね。あ、10リットルってのもあるんだって〜。いつか挑戦しようぜ?』

流石にそれは無理……話変えよ。


『アニメ楽しみ。今世界的に超流行ってるらしいよ。』
『みんな子どもの頃観てたよね。諦めない気持ちを学んだアニメだし…ガヤさんの映画も楽しみだわ。』


ガヤが珍しくチケットをメンバー全員に手渡しで《良かったら観て下さい》って配ってきた時はちょっとびっくりした。
この映画撮影してる時はいつもぐったりしてたし、辟易してんのかと思ってたけど…どうやらガヤのターニングポイントになる作品だったみたい。


『…ね。ガヤさんいつも溜め息ついてた。気持ちに余裕なくて撮影後も引き摺ったって。
けど、きっと俺たちメンバーに観てほしいって思うくらい命懸けで生み出した作品なんだよなぁ。』


作品に作り手の事情なんて要らないけど、その情熱はきっと観てる人に伝わるはず。
あのバスケアニメが文化の違う世界に通じるように、きっとガヤの映画も多くの人の胸を打つに違いない。


『ガヤの命懸け、しっかり受け取らなきゃね。』

『……ん。』


観ることにも生み出すことにも情熱を注ぐ男は、強く深く頷いた。


…と、天井のライトが消えて前方のスクリーンが白く光を放ち始める。


俺は宮田が抱えたポップコーンを反対側の手で摘みながら、そっと彼の二の腕に腕を絡ませた。


fin.

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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月21日 0時

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