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それからすぐに合流したガヤさんもご一緒になって、すてえじの真ん中に円になってお座りした僕たちはその瞬間を待っていた。


ヨシヤマさんのモシモシはセンガさんが持ってすたんばい。センガさんはご自分のモシモシも持ってます。二刀流です。カッコイイ!
みんなはご自分のモシモシをそれぞれお手手に持ってて、トシコさんはお目目を閉じてる。
僕は真ん中で伏せて、じっとヨシヤマさんのモシモシを見つめてます。

あぺぷさんからのメッセージは3分から5分間隔で送られてきてるってセンガさんが見てくれたから、実際には長い時間待ってた訳じゃないの。


でも、僕たちはちっとも動けずに息を殺して心臓の音を大きく鳴らしてた。
………その一瞬を逃してはいけないから。
少しでも気を抜けば、お相手にバレて彼を辿る道を遮断されたり変更されてしまうんだって。
確実に仕留めなきゃ次はないの。



………ピロリンッ。


『来たっ!』

センガさんのお声とともにみんなが一斉にモシモシを弄り出す。

『友だち登録…会話に参加…っ!』
『友だち登録!よしっ。』
『《あんた誰?》』
『《吉山くんはカッコイイよ!》』
『《吉山くんは美しい!》』
『《吉山…好きだ。》』

一斉に書き込まれためっせえじが、ヨシヤマさんのモシモシの画面に並んでは下へと消えていく。



『…見えたっ!お前の中の過去の哀しみも苦しみもありったけの喜びも、全てを込めて吠えろっ!!
その声が機械と電気の網目の中に隠れている悪意を顕にする。

………ドンブリ、吠えろっ!!!』


トシコさんの叫びに合わせて、センガさんがツウワボタンを押す。



……僕は吠えた。身体の奥底から。
それは僕の命を全て乗せた音。

ちっちゃなちっちゃな頃の痛みも悔しさも口惜しさも、
お父さんへの深い愛も、
7人を愛する日常の喜びも、
愛された日々への感謝も、
自然への畏敬も、
人間への驚きも、
時に訪れる感情の揺れへの恐怖も、
漫然とした平和への満足感さえも。
僕という命を全て込めて雄叫びを上げた。


ねぇ!あなたはだぁれ?



僕の遠吠えは青い炎となって、あぺぷさんが自分の黒いモヤモヤを届ける為に開いた小さな穴をみんなでこじ開けた電波の通路を辿っていく。
僕の声の【波】は強くて速い。一瞬にして彼の許へと到着。

通路を閉めようとしてももう遅いよ?

僕にも見えた…あなたの姿が。
機械の中にうずくまるあなたの影。
たくさんの人間の《正直》な悪意を指折り数えてほくそ笑んでる。

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作者名:みあん | 作成日時:2022年8月6日 0時

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