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『そんな大事なもんやったら、この男から殺したらぁっ!』

焦った男は俺に向かって《野獣の民》の剣を力いっぱい振り下ろす。普通の人間なら頭をかち割られて即死の勢い。
思わず条件反射で目を閉じた。

……でも何故だ?
心の何処かで、俺はタマを信じている。


実際、俺の頭は無事だった。


見上げると、男がブルブルと震えるほどに力を込めている……いや、恐怖で震えているのか?
なんと、その剣はタマが大きな片手で受け止め、握り締めていた。

『…タマ!手が…っ!?』

『大丈夫!この手ゴツいから。…だけど、やっぱりトシはまず心配してくれたね〜……ありがと。』

照れたように微笑む顔は、俺の好きな顔。
だけど、すぐにまた知らないタマになる。

『…さてと、前言撤回。《傷付けたら》じゃなくて、《傷付けようとした》のもアウトな?……んはははっ!お前はくっちゃくちゃにしたげる!!』

言うが早いか、前跳び蹴りからの半回転後ろ回し宙蹴り。
今までそんな肉弾戦にビクともしなかった男が、簡単に吹っ飛んで壁に身体を強打する。

『……っ!?何や、この馬鹿力…!』

俺は慌てて全員をドアの外へと引き摺り出した。また男に人質に取られては、タマが動きにくい。
俺自身は窓際へ忍び寄り、常にタマを助けられるように身構える。……必要なさそうだが。


『ぬおぉぉぉぉぉぉっっ!!』

剣を振り回しつつ迫ってくる男の腕を軽々と避け、その手首を掴んで手前に引っ張り、さっきの俺のように男の身体をぐるんと回して後ろに捻り上げたその腕を更に捻った。剣が床に派手な音とともに落ち、男の腕からはボキンッと嫌な音。
関節どころじゃない。完全に折れた音だ。

『んぐぅ……。』

『《人狼》が欲しかったんだろ?《まがいもの》じゃなくて《本物》見せてあげようと思ってさ。どうよ、ご感想は?……は?《バケモノ》??いい度胸じゃん。』

『……俺を《シロ》やと…。』

『その後聞いてた?俺はその人間の印象に残っていることを見る。でもお前の夢見では《人狼》のジの字も出なかった。《人狼》を探しに来たはずなのにね?つまり、お前にとって《人狼》はいないのよ。だって犯人は自分で、しかも殺しは印象に残らないほどお前にとって自然な行為だもんな??』

タマは男を突き飛ばした。

『……ねぇ、お前が最初に殺したのは誰?俺は知ってる。それは夢見できた。お前は、自分の恋人を殺したんだ。あんなに可愛い人の首を絞めて。そして山に逃げた。』

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作者名:みあん | 作成日時:2022年5月14日 3時

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