Werewolves (ページ43)

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ジュリアノがやるせない思いをつい口に出した。

『カーミは《野獣の民》だったのか…賢くて周囲の空気をよく読む男だと……山賊の生き残りが復讐テロを仕掛けてきた時には、シゲとともに奇策を練り出してアイツらを一網打尽にしてくれた。それで騎士の称号が２人に与えられたのに…。

…だが、シゲは、何故カーミに加担したんです？仲間だから？？《以前にもやったから》？』

無意識で仲間を守った…勿論、それも大きな動機だっただろう。

『……２人目の犠牲者はタイル職人の見習いだったよね。彼を殺したのはシゲだよ。

他は全てヘクサシアンの主だった残党を集め、再結集しようとしたこの人。断った者たちを口封じに殺したのかな？あの手甲鉤で。
ん〜、多分、２人目が腹を裂かれて殺され、連続殺人…いや、《人狼》だという噂が立ち始めたのをこれ幸いと同じ手法で殺し始めたんじゃないかな。最初は腹立ち紛れにやったんだろうけど。

キョウの剣はこいつが質屋に入れたもの。もう手甲鉤で事足りるし、下手に剣を持ってウロチョロしてると厳しくなった警護隊の監視の目に止まってしまうから。旅費も欲しかっただろうしねぇ？質屋に入れたのが、たまたまキョウに回ってきちゃって…びっくりしなかった？自分の剣を見た時は。』

男の顔がまた歪んだ。楽しそうに。

『いや、大笑いしそうになったわ。爆笑もんや。せやけど、こう思た。この剣は俺の元に帰りたがってる…てな。』

『……待て。２人目をやったのはシゲ…だと？？』

アリオは身を乗り出した。

そう。全く関係のない殺人が、ひとつになり、今回の件に集結する。

シゲの姉は、歯医者で仕事をしていたのだ。タイル職人の見習いが恋していたという女性は、シゲの姉……実は執拗な見習いからの求愛に悩まされていた。
ある日、見習いの男は彼女を襲った。まだ《人狼》騒ぎが起きる前で監視の目も少なく……なんとか彼女は逃げ出したが、心の傷は大きく残る。

……ああ、彼女の気持ちが分かるなんてここでは言えないが、自分の身体を嫌いな男に弄ばれることが、如何に屈辱的で如何に無力感を感じることか！
しかもおおっぴらに誰にも言えない。俺のように。被害者のほうが隠したいと願わなければならない苦しみは、どうすれば解消されるのか。
特に嫁入り前の若い女性なら尚更。

シゲは気付いて姉を問い詰めた。
誰かに聞いてほしかった姉は、やっと話せる相手を見つけた。

そして、シゲは姉を辱めようとした男を殺した。