Werewolves (ページ28)

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その匂いに、恥ずかしさと疼く想いでドクドクと打っていた鼓動がゆっくりと収まってきて、大事の前だというのに不思議なほど落ち着いた。

何故、こんなに懐かしい気持ちになるのだろう。
俺たちは、あの頃どんなふうに寝ていたっけ？

『……トシくん。おやすみ。』

抱かれる。
あやされる。
額に、つむじに、耳許に、そっとキスをされる。
うっとりして、酔いしれて、眠気が増す。
タマの柔らかな声とともに瞼が下りる。

『俺のお日様……やっと、やっと戻ってきた。』

細く冷たい指が、俺の後頭部に忍び込み、かき抱いたところで意識を手放した。

…………夢は、見なかった。

『……トシくん？トシく〜ん………起きないと手篭めにするぞ？？』

物騒な台詞に慌てて目を覚ますと、窓の向こうには朱くなってきた空。

『おはよ！どう、ご気分は？気持ちいい？？』

ベッドの端にはタマが腰掛けていた。
白の占い師…いや白き預言者は優しい笑顔で俺の顔を覗き込んでいる。

『…………タマ。』

『盛大に寝惚けてんな〜。起こしちゃろか？？』

そう言われて落ちてきたのは、唇へのキスだ。

『………………っ。』

何度か合わされた唇の柔らかで温かい感触に、頭の中が真っ白になった。

『……えっ？えっ！えぇぇぇぇっ！！！』

飛び起きた。

そりゃそうだ。人生初の衝撃的な起こされ方だ。絵草紙の中では何度も見た、俺の憧れの起こされ方第１位なのだ。
しかも、それをタマにされた。世界で１番好きな人に……そりゃ起きる。

『んはは〜っ！可愛いねぇ。』
『俺、ね、寝てた？えっ？寝てる間に何が…！？』

こんな起こされ方をするほど色っぽい場面があったかと記憶の中を隅から隅まで捜索してみるが、とんと憶えがない。

『……ごめん。ちょっと視ちゃった！んふふ…。』

何を？と訊き返す手前で思い当たる。
顔も身体も一気に恥ずかしさで熱くなった。

『俺もおんなじことしてた！だから…嬉しくて。』
『……俺と寝ると夢見ないって言ってたじゃん。』

すると、急に真っ赤になったタマが呟く。

『トシくんの気持ち知りたいって思ったら視えた。視たいと思って添い寝してたからだと思う…だってさ、視てもいいって言ってたよな？そしたら、俺の名前を何度も呼びながら……。』

『ぅわぁぁぁぁぁっ！！恥ずいっ！劇的に恥ずかしいからやめてくれぇっっ！』

居ても立ってもいられないとはこのことだ。
…が、ふと気付いた。

……待てよ？《おんなじことしてた》？？