Werewolves (ページ15)

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『…団長、俺帰りませんよ？俺はココで護衛を続けます。』

『シゲ？負傷した人間は治療が最優先。』

言っても無駄そうな勢いだが、一応釘を刺す。

『イヤや！自分の失敗は自分で取り返す！！俺の手で《人狼》を捕まえますっ。』
『これ以上、俺のそばで一般人の血もお前の仲間の血も流させるつもりはないよ？』

俺の言葉に、シゲは少しだけ口籠もった。
トリッキーで大きな声のムードメーカーだが、努力家で、実は人見知り。それでも自分の与えられた仕事や役割の為ならどんな無理でもする。
シゲとカーミやキョウ、ナガは実は同郷。西の国の出身だ。出会いは騎士団の宿舎だが、仲間と切磋琢磨してきたはずだ。

『…俺かてそうです。２度と失敗しません。仲間にこれ以上迷惑掛けたないです。』

『……分かった。じゃあ、アリオさん。多分、継続して宿を借りることになるはずですし、客室をもうひとつ開けてもらえますか。シゲはその部屋で養生させます。
シゲ、そんなに元気ならちょい付き合って？一緒に現場を見てくれ。』

部屋の中はかなり血生臭かった。
確かに１箇所大きな窓が開いている。外へ続く血痕はあったが屋根で途切れていて足跡も見えない。キョウの報告通りだ。
中は室内用の異国風なランプの灯りは消えていて、キョウたちが持ち込んだらしき廊下のものが２台、暖炉と机の上に置かれていた。

暖かいはずの炎の色が寒々として見えるのは、様々な場所に飛び散る赤黒い血痕のせいか。

床には大きな血溜まりと金の占い師コーチの遺体、上からばら撒かれたカード、かなりデカい犬のような足跡…。
摺り足でもしたかのように少しずつ流れた足跡なので、犬か狼かさえ判別できないが。

そして遺体。
仰向けに倒れた身体の左胸は、たったひと突きで背中まで仕留められている。これなら、その後の無惨な自分の首の状態は知らずに意識を失ったことだろう。それだけは救いか。
首はあり得ない角度でなんとか肩に繋がっている状態。鋭い金具を突き立てられて、一気に横に引き裂かれたかのように荒い傷。
常軌を逸した力の強さだけは間違いない。

金の占い師は死の直前にどんな感情を抱いたのだろうか。
苦しくも驚きもなく、ただ伏せ気味に開かれた瞳。
最初に俺に話し掛けてきた時の優しげな笑顔のように。

ふと見ると血溜まりの中に表も裏も真っ赤に染まったカードが落ちていた。
ハンカチーフでそっと拾い上げる。
ポタポタと赤い滴。印刷が崩れないように表を向けた。