ひとくふう荘 (ページ10)

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『てなことで、何作ってんの？俺も作って！』

キタヤマさんがお台所を覗き込んだ。

『タマもいきなり帰ってきたのよ。これはタマの分で簡単な担々麺なんだけど。オム焼きそばもできるぜ？』
『よしゃ！俺、担々麺っ！辛くして！！手ェ洗ってくるわ〜！お、ドンブリただいま！』

おかえりなさ〜い。

……と、そこへまたまた誰かがご帰還。

『ただいま〜……何か美味そうな匂い！』
『ニカ、おかえり！え？今日遅くなるって書いてあるけど。』

ニカさんは大きくて重そうな箱を抱えて、やっぱりベランダから帰ってきた。
箱を置いたら、すぐにベランダ横の水道で足を洗うの。僕と同じだけど、ニカさんは更に厚底の専用スリッパに履き替えてる。
《けっぺきしょう》なんだって。自分のお部屋には、絶対他の人入れないの。キンが怖いんだってさ。

『聞いてっ！キャンプ場でいくつか商品テストして、動画撮る手筈してたのよ。結構楽しみだったのにさ〜っ！』

ニカさん、キャンプグッズを企画販売してる会社の社員さんなんだ。今日はショップ店員から本社へ異動して、初めての企画だって喜んでたよね？

『あっちでバリバリのカミナリ雲発生して更に豪雨……いくら屋根があっても流石に動画にするにはキャンプのムードが出ないから、延期になった！少々の雨なら敢行するって言ってたの！でもカミナリはあかん！山で間近のカミナリはダメ！俺、死んだと思った！！』

あらら。かなり怖かったみたい。
そう言えば、今日はこちらも降ったり止んだりだよ？

『で、お腹減って死にそう。ガヤ、何か…それ何？』
『……マジか。分かった、分かりましたっ。オム焼きそばと…！』
『焼きそばっっ！！お酒は買ってきたっ！おつまみもあるっ！』
『ハイ。発泡酒？北山も飲むかもね。んじゃ、着替えといで。まだ濡れてるじゃない。』
『あいあい。特急でシャワー浴びてくる。ドンブリ、ただいま〜っ！』

あ、シャワーも浴びるんだ。
《けっぺきしょう》って大変なんだね〜。
それでもね、この７人で一緒にいたかったんだって。７人のキンは平気なんだって。
実はニカさんが１番みんなを好きなのかも〜？？

それにしても、ガヤさんが大変そうだなぁ。いつもなら、まとめてエイヤッて作るの。今日は１人ずつ帰ってきたからね。

と、そこへ着替えたタマさんが上がってきた。モシモシ持ってる。