ひとくふう荘 (ページ49)

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『大体、俺はトシくんのことを俺の《奥さん》だと思ってるし！《嫁》はトシ！！』

いや、そこじゃないよ、タマさん？

『俺が《嫁》？いいよ。俺で良ければ。』

ミヤタさんの笑顔が、やっと本物になった。

『タマが相手なら、俺はどっちでもいい。』
『……ちょっと、考える。』

タマさんはパタパタとスリッパを鳴らして、ミヤタさんのそばに駆け寄った。
それから、きゅっとミヤタさんのお手手を握って、小声で呟く。

『…バカ。急に何だよ……。』
『言いたくなっちゃった。』
『もぉ…びっくりしたじゃん。』

尖らせたぽったりしたお口に、ミヤタさんは素早くお口をペタッとして、また笑った。
あら、大胆。

『…や、やめとけっ。人前で！』

言いながらも、照れて俯くだけ。お手手は離さない。お声も全然怒ってないね？
そんなタマさんを満足気に見つめるミヤタさんの笑顔は、それはもう本物を通り越してとろけちゃいそう。

『………あのぉ？』

あ、忘れてました。
完全に存在を忘れ去られていたハマさんが、恐る恐る口を開く。

『え〜と。お２人は、そういうご関係…なるほどなるほど。』

ミヤタさんとタマさんはピタリと肩を寄り添わせて、今にも溢れんばかりの笑顔でハマさんのお顔を見た。他所の人にバレても２人でなら怖くないってお顔で。

『久しぶりにタマやんの顔見た時、えらい綺麗になったな〜とは思ってたけど、そっか、ほんでかぁ。いや、男の人に綺麗なんて失礼かと思ったんよ。でも、納得。
男同士て、まあ、びっくりはする。でも、２人ともなんかいやらしい感じには見えんし、なんか、なんか…違和感ないわ。なんでやろ？

あっ！！ベッドひとつでええなんて言うてごめんね？冗談よ？いや、俺はタマやんはオモロい釣り友やと思てるだけやしさ、気にせんといてな？ほんまごめん。』

『あ、いや……ん、そう、ちょっと嫉妬しちゃって。こちらこそ、ごめん！
俺も男だから好きって訳じゃなくて…気が付いたらタマしか目に入らなかっただけなんだよな。俺も不思議。だからゲイではないよ？』
『……。』

戸惑いながらも、とても正直に自分の気持ちを話すハマさんに感化されたのか、否定しかけて、素直に気持ちを認めたミヤタさん。
そのお顔をタマさんはとくと眺めて、くふんと笑った。
……嬉しいんだね、きっと。可愛いねぇ。

『そうかぁ。いや、びっくりした。』
『羽間ちゃん、気持ち悪くねーなら釣り友でいてよ？俺、まだ教えてほしいこといっぱいあるしさ。』