退屈な日々に【9K】

車デート(Anotherstory)ーymmtー ページ37

ずっと、羨ましかった。


愛されてる人が、私よりもずっと両親に愛されてる弟が。

でも、弟は私が大学1年の時に、事故で意識不明となった。

数日後、奇跡的に目を覚ました弟は全身に麻痺があり、生きていくのもままならない状態だった。

弟を溺愛していた母は、弟の世話に全力を尽くした。


私は大学を卒業してQuizKnockに就職した。

でも、両親からは出来れば戻ってきて世話を手伝って欲しいと言われていた。

私は、巫山戯るなと叫んでやりたかった。

どちらも平等にしているつもりでも弟の方をより可愛がっていた父。

そんな父から母が病気で倒れたと聞いた。

私は正直ざまあみろとしか思わなかった。

そんなある日、弟から電話がかかってきた。


『姉ちゃん……。』

｢何？｣


弟は、嫌いではないが、決して好きにもなれなかった。


『このままじゃ、父さんも、倒れちゃうよ。恨み言なら、俺が聞くから、戻ってきてくれないかな。』


前とは比べ物にならないくらい弱々しい、ゆっくりとした声。


｢お金なら毎月仕送りしてる。それでヘルパーなりなんなり呼べばいいでしょ。｣

『……俺、姉ちゃんに会いたい。姉ちゃん、ずっと帰ってきてくれないから。』


帰るわけないじゃん。どいつもこいつも口を開けば弟の名前ばっかり。


｢……あんた、1人でどこまで出来る？｣

『1人で起き上がって、電話するくらいなら、出来るよ。あと、車椅子に乗せてくれれば、1人で動ける。』

｢言っとくけど、お母さんの世話はしないわよ。もう会いたくないし。｣

『……分かってる。ありがとう。』

｢帰る日時決まったら、また連絡するから。｣

『うん、じゃあね。』


電話を切って、壁を殴る。

最終的には弟に甘い自分自身も、それを分かってる弟にも、腹が立った。



それから伊沢さんに事情を説明して退職願を渡した。

でも、伊沢さんは預かるけど受理はしない、一時的な休職扱いにする、と言ってきた。

もう戻ってこないと思う、と言っても聞いてはくれなかった。

＿＿＿＿→←虹がかかるまでーsgー

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