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途中でお昼ご飯を買って車内で食べつつ、30分ほどしてたどり着いたのは、東京郊外にあるふれあい広場のような場所だった。
「おぉ〜、可愛いね!」
「でしょ!行きましょ!」
僕の手を引いていくAさんは、とても楽しそうで、僕は幸せな気持ちでいっぱいになった。
動物たちと沢山戯れて、めちゃくちゃ癒された状態で車に乗り込む。
「すっごく可愛かったね!」
「ふふふ、そうですね。楽しかったです。さて、次の目的地まで少し時間がかかりますが、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあ出発しますね。」
「うん!」
車が動き出して、程よい風に髪が揺れる。
「……ねぇ、Aさん。」
「はい?」
「今日はさ、敬語、なくしてくれないかな?」
オフィスやご飯だとお互いに敬語だからあまり気にならないのだが、今日くらいは、Aさんにも敬語を外して欲しかった。
「っ、えっと、分かっ、た。」
Aさんはびっくりしてたけど、敬語はちゃんと外してくれた。
「ねぇねぇ、今度はどこ行くの?」
「え、あぁ、空気が澄んでたら緑の光が見える場所、かな。」
………………あぁ。
「グリーンフラッシュ?」
「正解。」
ってことは海か。
「へぇ〜、楽しみ!」
それから1時間ほどして着いた海は、夕焼けに染まった空を綺麗に映し出していた。
思わず写真に収める。
「……綺麗、だね。」
「そうですね。」
その後、特に会話もなく、2人でゆっくりと沈んでいく太陽を眺めていた。
太陽が完全に沈み、夕焼けが夜に飲み込まれてきたころ、僕は緊張しながら七海さんの手を握った。
彼女はバッとこちらを向いて、驚きで目を見開いた。
「……好き、です。ずっと、前から。僕と、付き合ってください。」
「っ、ごめんなさい。」
握った手は、そっと離された。
僕は、涙を堪えるのでいっぱいいっぱいで。
それから、家に送って貰うまでの車内は、明るい曲が虚しく流れるばかりだった。
家の前について、車を下りる。
「今日、楽しかったよ。ありがとう。」
Aさんにできる限りの笑顔で伝える。
「……こちらこそ、すごく楽しかった。ありがとう。」
彼女の顔は、今にも泣きそうな顔をしていた。
日曜日は丸一日沈んで過ごし、月曜日にはどうにかこうにか気持ちを切り替えてオフィスに出勤した。
「おはようございます。」
「おはよ。……あ、山本。ちょっといい?」
「え?はい。」
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時