7 茜色に染まる ページ7
その日の帰り道。
空は茜色に染まり、既に天高くにはぼんやりと白い月が姿を現している。辺り一面がオレンジ色のフィルターをかけたように色付き、春の香りが夕風に乗って届いた。
「……どうしようかな」
そんな情緒を楽しむ余裕があるはずも無く、頭に浮かぶのはこの先の部活の事だけで。一人ではないと分かった安心感からか、昨日よりかはやってみようかなという思いはあった。ただし、どうしても何か心に痼りがあるような感じがして、つい歩きながらも下のアスファルトを眺めてしまう。
すると、すぐ近くで何かが擦れる耳障りな音が届いた。顔を顰めながらその発生源を確認すると、少し前で自転車がブレーキをかけて停止した音だった。
自転車に跨る男と目が合う。
その水縹の瞳には、見覚えがあった。
「あ、……お疲れ様です」
「お疲れ。今日も来とったよな」
初めて会った時と同じ、何かを見定めるような視線。正直、あまり良い気はしないで、口を閉ざしてしまう。
そして、これは説得されるパターンかと身構えるが、どうやらそういうつもりは無いらしい。
「サッカー部、ええやろ」
「……そうですね。良い部活だと思います」
その声色は、子供が好きなものを自慢するときのように明るかった。返した言葉は本心だ。短時間でも分かるが、真剣に練習に取り組み、雰囲気も良い。マネージャーの先輩も優しくて、慌ただしく仕事をこなす姿は素直にかっこいいと思う。
正直、直球でマネージャーをやってくれないかと言われると覚悟していた。……それならそれで、もしかしたら勢いのままに断っていたかもしれない。予想は外れ、彼は自転車に乗ったままジッと此方に視線を投げかけていた。
「土曜日、練習試合やねん。もし暇なら見に来て」
「あぁ……はい。分かりました」
「焦る事ちゃうし。じゃ、」
了承の言葉を聞いた彼は、小さく笑みを溢してそのペダルに足を掛け、身を乗り出し、すぐに濃い夕焼けに溶けて消えていった。
つい返事をしてしまった事に、若干の後悔を覚えながらも、既に見えない背中を目で追っていた。とりあえずポケットからスマホを取り出し、土曜日、練習試合と登録しておく。
ふと部活の様子を思い返していると、とある事が頭に浮かぶ。
「……キャプテンの名前は？」
そういえば、名前を未だに知らないことに気付いた。
名前、なんて言うんだろう。
僅かな好奇心が芽生え始めていた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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