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「褒めてや」
「え?」
「ちゃんと、見てたんやろ?」
釣り上がった口角は楽しそうに此方を向いている。
……見てました、見てましたけど。プレイもしたことのない初心者に、何を褒めろと言うんだ。出てきた言葉は、一つだけだった。自分でも、他に言葉があっただろうにと哀れにさえ思う。
「……っかっこよかった、です。とても」
豆鉄砲を食らったかのように瞬く目。僅かに赤くなる耳を隠すように顔を覆う右手。そんな反応をされるとは思っておらず、此方まで頬が熱を持つのが分かる。
「……かっこよくは、無いけど…。まあ、なんつーか、……やっぱなんもないわ。試合、勝って良かったわ。な!」
「……そ、そうですね!」
できてしまった形容できない空気を誤魔化すように。他に聞いている人もいないのに、何もないですよと取り繕うように。訪れた静寂に、二人ともが口を結んで顔を背けていた。
「……そういえば、コネシマ先輩って長ないか」
「……そうですか?」
「口当たりが悪い」
先輩が言うわけでも無いのに。というか、先程からの話の飛びようは大阪のおばちゃんも吃驚だ。
「じゃあ、……コネ先輩、は?」
「……まだマシやな」
「はあ……」
謎の評価だけを残して、先に行ってしまった先輩。帰りのバスは違うから追いかけられないけれど。
「なんなんだ……」
ふと初めのむず痒い雰囲気を思い出し、頭を振る。──あれは、忘れよう、忘れるべきだ。
Aちゃん行くよ〜、といつもの調子でバスの中から呼びかけたのはユキだった。
「顔赤いよ〜?日焼けかな」
「……え?ああ、多分そう…!」
ともかく、勝ててよかった。次勝てば、いよいよインターハイ出場が決まる。気を抜いてはいられないぞ、と揺れるバスの中、スコアノートを見返すのだった。
***
【d!】左眼に宿すもの【kn】
こちらも是非。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました(単純) (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - キャーknサンイケメーン((( 内容と作者様の書き方が好きです。!もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい!もうこれは全裸待機ですね!! (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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