47 青空と白と黒 ページ47
見上げれば、薄雲が満遍なく広がった水色の空だった。いよいよ県大会、第三試合である。対戦相手は、何かの因縁なのか前年度に敗北を期したライバル校だ。部員皆の瞳に、少しのことでは到底靡きそうもない闘志が宿る。保護者の歓声を、砂と共につむじ風が巻き上げ散らす。風の強い日だった。その為か、砂に目を隠されどちらのチームもボールの扱いに苦戦していた。四十分の前半を終え、一向に変わらない試合模様。ハーフタイムにベンチに座る選手達からは疲労が見て取れる。ただでさえ強豪のライバル校だ、必要な集中力は並みじゃないだろう。
「追加でタオルちょうだい！」
「手空いてる人仰いであげて！！」
忙しなく声が飛ぶベンチに、私もぼうっとしてはいられない。飲み干されたボトルを受け取って回る。
「フォーメーションを変えるぞ。3-3-2-2でコネシマとササキがツートップ。サイドを有効に使っていけ」
コーチの声に耳を傾ける皆の表情は真剣そのものだ。因縁ともいえる相手に、リベンジの炎が渦巻く。
「最後まで気ぃ抜くんちゃうぞ、行くで…！」
「っしゃ！」
「おう！」
ハーフタイム終了を知らせるアナウンスの声に被せるように、コネシマ先輩が皆を一瞥して声を上げた。その力強い声に、選手達は引き締まった顔で芯のある言葉を返す。今迄とは違う空気を、ひしひしと肌で感じた。
誰もがPK戦を覚悟した、残り一分の時だった。
「シッマ！！」
針の穴を通すように、素早く繋がれた白黒のボール。ササキ先輩が蹴ったボールをコネシマ先輩が右足でトラップ、この時、空よりも鮮やかな水色は既に白のゴールを捉えていた。胸の前で握った両手が震える。お願い、決まれ、と。
鋭く放たれたボールは、キーパーを通り越して白網に刺さる。一瞬の静寂の後、ピピ、とホイッスルの音がコネシマ先輩に注目していた全ての人へ響いた。
「……ッしゃあ！」
「ナイスゥ！」
「ええぞシッマ！」
拳を握り締めたコネシマ先輩に抱き付くササキ先輩。同時に、甲高いホイッスルが三回鳴らされ試合の終了を告げた。本校の勝利だ。
「コネシマ先輩、お疲れ様です」
「A。見てたか？ちゃんと」
「当たり前です」
見逃さない、見逃す筈がない。意識して見ていなくても、気付けば目で追ってしまうのだから。そうか、と笑ったコネシマ先輩もいつもの勝利よりも嬉しそうだった。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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