36 通り雨と自転車 ページ36
現代文の授業は好きだ。元々文字を書くことは嫌いではないし、人によって紡がれたストーリーを読むことはむしろ好きだった。それに何より、授業は年配の先生の個人的思想を聞いているだけで終わる。それを時間の無駄だと捉え専心に話を聞くことができないのは、私が勉学に対して前向きさの欠片も持ち合わせていないという恥ずべき点だ。
授業終了を告げるチャイムと同時にへたりと机に倒れ込む。座っているだけでもきついものはきついのだ。なんとも形容しがたい虚無が体を重くする。ふと微睡みに落ちそうになったとき、妨げるように肩を揺すられる。こんな時に、とぼんやりと起き上がると、ぱっちりとした瞳を申し訳なさで染めたまいちゃんが廊下を指差していた。
「二年の先輩がAちゃん呼んでって。サッカー部の人ではないみたいだけど……」
廊下の窓ガラスの陰に可愛らしいボブの女の子が佇んでいるのが確認できる。シャツにしているリボンが緑色だから、まいちゃんの言う通り間違いなく二年生だろう。特に顔に見覚えがあるわけでもなく足取りを重くするが、先輩を待たせるわけにもいかないと急ぎガラガラと扉をスライドさせる。
「あの、何か……？」
「あ！サッカー部のマネさんだよね？実は、お願いがあって」
ほんのりと頬を赤らめ彼女が告げた言葉は、私をもやもやと悩ませるのには十分なタネだった。じゃあお願いね、とにこやかに両手を合わせ走り去っていった彼女の後ろ姿はとても軽やかに見える。
「なんだったの？結局」
うーん、と言葉とも言えぬ言葉しか出てこない私にまいちゃんは困り顔だ。それでもさほど興味は無いようで、それは常套句のようなものだったのだろう。
「そうだ！そろそろ呼び捨てで呼んでもいい？」
「……え？うん！いいよ」
なんの突拍子もなく投げられたお願いに多少気圧されつつも、距離が縮まったようで素直に嬉しかった。一つに束ねられた茶髪が艶やかに揺れている。人に相談事を話すのはあまり得意ではない。でも、彼女にだったら良いと思えたのはその人懐っこい柔らかな微笑みのおかげだろう。
「……まい、あのさ」
「うん、なになに？」
嬉しそうに身を乗り出した彼女に、少しずつ私は言葉を紡いでいった。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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