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「あれ、副部長さんは…」
「アイツいらん事言いよってほんま…」
コネシマ先輩は不満げに顔を顰め、副部長さんへの言葉だろうか──明後日の方向を向きながらぼそぼそと何かを呟いている。
どうしたんですかと疑問符を浮かべながらも、先輩から来てくれた事が嬉しくて、思わず緩みそうになった口元を締めた。
何も無いと言わんばかりに少し先を歩き始めた彼の隣に並ぶと、そういやあ、とその水縹の瞳が此方を向いた。
「勉強してるか？ちゃんと」
「最初のテストからやらかしたくはないので、一応は」
おー、やるやん、と半笑いの彼は、私を何だと思っているのだろう。小さく唇を尖らせつつも、彼の穏やかな笑みに自らの口角は自然と上がっていた。
五月の湿った空気が肌を掠め、ゆらゆらと揺れる前髪を手で押さえながら、静かな土手を二人並んで歩んでいく。ゆっくりと流れていく深い藍の景色と植物が風に揺れ奏でる音は、なんとも耳に心地よく落ち着くもので、疲れた心を癒してくれるようだった。
「先輩はー…ちゃんとやってそうですね」
「当たり前やん」
元々真面目な人だと思っていたが、それもそうか。三年は進路決定の為の大事な年だ。この学校の生徒の殆どは大学へと進学をする。それなりに名の知れた大学へ進学する人は少なくないが、果たして彼はどうなのだろう。
「俺、内申必要やし」
「という事は、推薦狙いですか」
「せやな」
県大会出場チームのキャプテン。それだけで戦える武器にはなるのだろう。なんとも合理的で効率の良い考え方で、先輩らしい、なんて思ったりもして。
キリキリと一定の音を立てて回転する自転車のチェーンを他所に、別れ道が近付いてくる。辺り一面はすっかり闇に包まれていた。
「じゃあ、また明日」
「テスト頑張ってな」
「…ありがとうございます」
先輩も、と口を開く前に、颯爽と自転車に乗って直ぐに闇夜に溶けていった先輩。
そういえば、副部長さんに何と言われたのだろう。あの出会ってから初めて見た、焦ったような姿は少しだけ気になった。
「聞いたら教えてくれるのかな」
それでも家に着いてブレザーの制服を脱いだ頃には、そんな事はすっかり頭から消え去り、明日のテストへの不安だけが残っていた。疲れた身体に鞭を打ち、渋々数学のワークを開きシャーペンを手にした。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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