22 見逃すな ページ22
コネシマ先輩の誕生日もあっという間に過ぎ、いよいよ第三試合。この試合に勝つことが出来れば、県大会出場が決定する。
会場は、幸運にもこの高校のグラウンドだ。慣れたこの地で、まずはインターハイ出場への切符を掴むための第一歩となる大事な試合。チームの皆の集中力は、益々高まっていた。
ピー、と試合開始を告げる甲高いホイッスルが鳴った。それと同時に、強風で砂が舞う中動き出す選手たち。
このチームは、走力を武器にした攻撃型チームだ。素早いパス回しと巧みなドリブルで、相手チームを翻弄する。忽ち相手の守備陣形は崩れ、得点の要であるフォワードがゴール付近に深く入り込む事が出来る。
「逆サイ空いてんぞ!!」
「もっと空間使え!」
ベンチからの指示に、ボールを追いかけながらもしっかりと従う。風に吹かれ靡くユニフォームを物ともせず、選手たちのギアが一段と上がった。
──さすが、というべきか。
県大会出場を目前に、このチームは更に力が増したような気さえして、思わず息を呑む。
相手の隙を突きディフェンダーから素早く回ってきたパスを受けた副部長さんは、華麗に相手のディフェンスを躱し、得意の左脚で思い切りシュートを打った。
回転のかかった白と黒のボールは、美しく弧を描き白い網に吸い込まれた。
「っしゃ…!」
「ナイスゥ!」
「いいぞ!!」
咆哮を上げつつ拳を突き上げる先輩。その弾けるような笑みは、ベンチの後ろからでもキラキラと輝いて見えた。
試合が進み二点の追加点をあげた所で、終了を知らせる三回の笛の音がグラウンドに響き渡る。選手たちは、晴れ晴れとした表情で笑顔を交わしていた。
片付けも終わり顧問から次の予定を聞いた時、じわじわと県大会出場決定という事実が身に染みてきた。このチームにとってはただの通過点に過ぎないのだが、何もかもが初めての私にとってはやはり嬉しいもので、ワクワクと高鳴る鼓動を抑えることが出来なかった。
部全体の挨拶を終え、解散になっても自らの荷物を片付けつつ余韻に浸っていると、荷物も持たずにその場に佇んでいるコネシマ先輩を捉える。
なんとなくその表情も険しいように感じられ、声をかけようとした時、先輩が右手で左手の肘の辺りを抑えている事に気付く。
何かに耐えるように唇を結んでいた彼を、気付いた時にはその怪我をしていないであろう右腕を掴み、部室へと引っ張っていた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました(単純) (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - キャーknサンイケメーン((( 内容と作者様の書き方が好きです。!もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい!もうこれは全裸待機ですね!! (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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