私の彼の事② (ページ7)

今日:25 hit、昨日:9 hit、合計:31,353 hit

2022.3/31.23:58 ページ7

私は未来からきた未来人。
2072年からきた未来人。
遥か未来からあなたに会いにきたの。

50年後のあなたの隣には可愛いおばあちゃん、
もとい奥様が居て、
大豪邸のテラスで奥様とお茶を楽しんでるの。

子どもは女の子1人に男の子1人。
とっくに2人共大きくなって立派な大人に成長してる。

長女は国際結婚して今はフランスに居て、
長男はあなたの背中を追いかけて、
今や一流のお笑い芸人。
テレビで見ない日はないわ。

そして、

「"そして"やなくて」

「ん？」

「それに何？娘が結婚っていうのも絶対イヤやし息子が芸人になんのも絶対イヤやねんけど」

「……えぇ」

「なに」

「私は未来からきた未来人」

「もうええねんっ、」

ベッドのヘッドボードに背中を預けて、
雑誌を見たり、
漫画を読んだり、
スマホを触ったり、
お互いがゆったり過ごす就寝前のリラックスタイム。

夜が明ければまた彼の慌ただしい1日が始まる。
仕掛けるなら今しかない。

そう思った私は、
日付が変わるちょっと前から発動させた。

そして見事に私のエイプリルフールは散った。

整形してん。とか
他に好きな人ができてん。とか
ベタベタなのよりも、
ちょっと面白みのあるのんにしようと思ったのに、
面白くなかったみたい。

「濱くんやったら絶対爆笑してくれると思ったのに」

「ﾝﾌﾌ、まぁ面白かったけど。いきなり真顔で"私は未来人"って」

「一週間前から考えてたのに、」

「何してんねん、ｯﾌフ」

横目でチラッと見れば、
そんな事を言いながらクイッと口角を上げて、
漫画を読んでいる。

ぐすっと鼻を啜って、
口元に手をやった。

「……え」

私に視線が向けられたと同時に、
ふいっと彼に背中を向けて、
涙を払いながら少し頭を下げてみる。

勿論泣いてなどいない。