私の彼の事② (ページ12)

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「んーっ………、」

さっきからずっとうなされてる。
そんな彼の声で目が覚めた。

首筋にはじんわり汗をかいていて、
思わず肩を揺らして彼を起こす。

「……っ、」

「…濱くん？」

「…」

「どうしたん？大丈夫？」

「……」

「変な夢でも見た？」

目は虚ろで、
明らかに焦点はあっていない。

「…A？」

彼はゆっくりと息を吸って、
私の名前を呼ぶ。

「凄いうなされてたけど、大丈夫？」

「……これも夢？」

「夢ちゃうよ？」

凄く不安そうな顔で私に手を伸ばす彼を、
精一杯受け止める。

「ほんまに……？」

「うん」

「夢の中で夢……」

まだ寝ぼけているのか、
そんな事を口走りながら、
私の肩口に顔を埋めて息を整える彼。

「すんごい気持ち悪い夢見た、」

その瞬間、
私を抱き締める彼の腕に、
ギュッと力が入るのが分かった。

「…俺は、Aがおったら他になんにもいらん。Aの為やったらどんな事でもする」

「……どうしたん、」

「だから俺から離れんといて」

耳元でそんな事を言うと、
するすると体勢を変えてまっすぐに私の目を見据えてくる彼に、
金縛りみたいに体が動かなくなった。

「ごめんな」

「何で謝るん…、」

存在を確かめる様に、
何度も何度も私の名前を呼ぶ彼。

彼の気がすむまで、
彼の不安が消えるまで、
私は彼の全てに飲み込まれた。

それに負けないように必死にしがみつくけど、
そんなのは所詮無理な話だった。

そして、
再度目が覚めた時にはもう遅くて、
私も彼も仕事に大遅刻。

それこそ夢であれ！！
と願ったけど、
そこはどう頑張っても変えられない現実だった。