深紅 ページ31
八「何でお前がここにいんだ!」
「へへ、来ちゃった」
八「どうやって入って来た」
「いつも主人がお世話になっております〜
坂田銀八の妻のAです〜
ちょっと届けたい物がありまして〜」
八「もういい黙れ」
なぜ銀八こと私の大好きな旦那さんがここまで驚いているかというと、なんの前触れもなく放課後に学校に来て、国語準備室でくつろいでいたから
大学生の時にも来ていたけどその時はちゃんと連絡入れてからこの部屋に来てた
だけど今日は銀八に連絡を入れずに来て、事務の人とのやり取りを再現してみたら、この表情が見れてもう既に大満足
八「んで、何か用か」
「ただの気まぐれじゃなくてちゃんと目的があってきたんだ」
八「だからなんだって」
「じゃん、これ覚えてる?」
呆れているにしては嬉しそうな表情をしている銀八に見せたのは卒業式の日に2人で撮ったチェキ
それを見た銀八はあの時のことを思い出したのか罪悪感と背徳感に駆られ、煙草を一本口に咥えて私の隣に腰かける
私も家でこれを見つけた時、同じ気持ちになったから見ればすぐに分かった
それを見つけてから居ても立ってもいられず、高校生の制服を着崩していたあの頃より幾分か大人びた黒いプリーツのワンピースを身に纏った
メイクだって子どもっぽくならないようにSNSやらをフル活用してみた
でも口元だけは青の時禁止された桃の香りのするリップクリームを塗る
いつもと違う私に先生はどんな反応を見せてくれるかと、本来の目的を忘れてワクワクとしてしまう
「せんせ、一緒に撮ろ?」
八「俺をどうしたいわけお前は…」
銀八先生は白い頬を紅潮させ悪い顔をする
ゆらりと妖しく揺れる深紅の瞳が私に近づき、高校生の私を弄んでいた時の様に髪に指を通す
誘った私も悪いけど、写真を撮りたいだけなのに、先生はソファに並んで座っているだけで誰にも言えないことをしてるような雰囲気を作り出す
更に距離は縮まり、もじゃもじゃが首元に埋まればチクリとした痛みが走る
――カシャッ
最悪のタイミングでのシャッター音は銀八先生によって鳴らされたもの
いつの間にかチェキは奪われ、銀八先生の顔は首元に埋まり映らない代わりに、顔を真赤にした私だけが無残にも映るフィルムが吐き出された
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時