朝飯 ページ22
夜、目を閉じて夢を見れば銀色の世界に包まれて日に日に銀八先生との記憶が思い出されていく
いつか見た銀色の扉の向こうに行ったら銀さんとのこれまでもこれからもが消えてなくなってしまう
それが怖くて、嫌で仕方ない
銀さんも銀八先生も好きだからこそ選べないし選びたくない
こんな贅沢な選択肢は人生において初めてで極めて難しいもの
ほら今日も銀八先生が私を扉の方へ誘う
先生の手を取って行こうとすれば朝日と共に消えていく、幻のように――
銀「Aおはよ」
「おはようございます銀さん」
銀さんが隣に寝転んで私の頭を撫でれば、私はヘラりと表情を緩めて銀さんに擦り寄る
初めてのお泊りで私の肌には数えるのが億劫になるほどに銀さんのものだという痕跡が無数に散りばめられている
元からあったものは新しく書き換えられているのは言うまでもない
私だけでなく銀さんの方にも控えめではあるが私が付けた紅い花や背中には爪痕までもが刻まれていた
それが恋しくて愛しくて堪らない
銀「朝飯、何食いたい?」
「ごはんと卵焼き、なんてどうですか?」
銀「卵焼きは甘いのがいい」
「ふふ、とびっきり甘いのですね」
銀さんが朝ご飯を作る流れが私が作ることになったけど、こんな何気ない会話も愛しくて失いたくない
ふんわりと銀さんに抱き締められれば肌が密着して昨夜の熱が蘇って思わず銀さんの筋肉質な逞しい胸板にもう一輪の花を咲かせた
銀「そんなんしたら俺の身体、真っ赤になっちまう」
「私の身体はもうすでに真っ赤です」
銀「ああ?もっと奥底まで真っ赤な花 咲かせてやろうか?ああん??」
軽口を叩き合えばどちらからともなく唇を重ね、朝ごはんの前にもう一度銀さんと身体を混じりあわせる
このまま時が止まればって銀さんを身体に感じては何度も強く強く願った
銀さんに夢中になりすぎて幻と現実をいつの間にかすり替えてたんだ
銀色の幻はこっちの方だった
銀八先生と生きる世界が私がいるべき場所なのは分かってる
幻でも夢でもいいから…
少しだけでいい、あと少しだけでいいんだ
この幸せは消え去らないで
この銀色の幻に絆されたままでいたい――
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時