【d!】ご令嬢が思い出したら？【軍パロ】

▽裏目に出る ページ7

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前世ぶりに手に取る学術書に心を躍らせて早数ヶ月。最初こそ読むにも片手に辞書が必要だったが、一月も経てばそれなりに内容を噛み砕けるようになった。


リクエストを送ってからは、商人が園に来る時には哲学書や政治の本なんかを持ってきてもらうようにしている。

お陰で最近よそのご令嬢から距離を取られているような気もするのだ。
特に何か問題があるわけではないが、矢張り若い子達と馴染むのは厳しいかとアラサー心に隙間風が吹く。


ともあれ、今世初の知識たちは私を楽しませるには充分過ぎるものだった。
なんと今の世は前世から4桁年以上離れているらしい。世界の国家・国境は大きく変わっており、覚えるのは主要国だけでも時間を要するだろう。


あの空色髪の眼鏡男子は、あの日以来必ず商人と共に顔を出すようになった。3回目の対面の時、令嬢らの噂から彼が幹部のチーノ様という方であると知った。

毎度来る割には何か仕掛けてくるでもなく、稀に本に関する会話を2、3言する程度であった。
いつか見た悪どい笑顔は幻だっただろうか？


すっかり安心しきった時に限って何かが起きる、フラグとはそういうものである。
前世で散々学んだであろう事を私はすっぽり忘れていたのだった。






「失礼する。ヴェネマーレア王国第2王女、A・クイント・マーレア令嬢はいらっしゃるか」


平穏な日常はそう長くは貰えないものらしい。
穏やかな朝。新たな歴史書に手をかけた時、事は起こった。

線の細い面に人の良さげな糸目、柔らかそうな髪は緩く纏められている。


彼が私を呼んだのか、広間の隅のソファで読書をしていた私は慌てて椅子から腰を上げた。


『はい、私はここに』

「突然で申し訳ないが、総統閣下が君をお呼びだ。今から共に城へ来てもらう」

えぇ！？！？！？
恭しく下げた頭を勢いよく上げそうになってしまう。返事をしなくてならないのに、呼吸が乱れて声が上手く出ない。

どうして急に総統閣下が…
確かに楽になる事を望みはしたが、それはこういう心臓に良くない思いをしたくないからだ。


『……承知いたしました』

半分裏返った声でどうにか返事を絞り出す。男は「ついてきて」と一言だけ言って、スタスタと歩き出してしまった。

大変目立つ場所なのが悪かった、今までで一番ご令嬢方の視線が痛い。
あぁ、私は今日を持って自身の命日を知る羽目になるのか。

震える体を叱責しながら、此処に来て以来始めて園の外へと足を踏み出したのだった。

▽目的は一体→←▼疑わしい

ラッキーゲーム

hoi

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