▽忘れた頃に ページ28
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風に靡く稲穂に目を奪われていると、そこに現れたのはバッテンの模様が描かれたマスクをつけた男性だった。
幹部の方の1人だった気もするが、生憎名前がわからない。この畑は彼の所有物だったのか。
予期せぬ事態だったが言葉はぶっきらぼう気でも心根の穏やかな人なのはすぐにわかった、ひとらんらん様と言うらしい。
そろそろお暇しようかと考えていた所、彼は美味しいな洋梨を１つ手に取り渡してくれた。慌ててお礼を言う私に目を細めて笑う姿は正直ちょっとドキッとしたものだ。
『また、たまに此処へ来ても良いでしょうか…？』
「うん、いいよ。好きにしな」
園内の自室に戻り、手中にすっぽり収まった梨に目をやる。女中さんに頼めば剥いてくれるだろうが、いい歳して果物１つ捌けないのはどうなんだろうか。
王女という立場をもってすれば、自分で食べる物を用意する事などないことは当然なのだが、総統との会話を経て意識が前世に寄っている私がそんな事実に気づきすらしなかった。
『うん、意外となんとかなるもんだな…』
結局果物ナイフを一本と小皿を借りて自分で剥いて食べることにした、女中さんは自分が剥くと申し出てくれたが。
恐らくまともに刃物を使うのは今世初だが、感覚を覚えていたおかげで流血沙汰だけは避けられた。
『頂きます…………ん、美味しい』
「せやろ、ひとらんの作るもんメッチャ美味いねん」
『〜〜っ！？！？』
背後から突如現れたのは目深にフードを被った男性。心の準備などある筈もない私は、声にならない悲鳴を上げたのだった。
目の前の彼はシィーっとジェスチャーして見せた、誰のせいだと思っているのか。
「久々やな、お姫サン」
『お、お久しゅうございます、ゾム様』
とって付けたお嬢様言葉に、彼の表情がやや引き攣ったのは見なかったことにしよう。
上を向くと、そこには綺麗に外されたグレーチングの隙間があった。
『あの、いつから…？』
「さぁ？そんな事より梨一欠片くれへん？」
どうやら質問に答える気はないらしく、サクッと話題を逸らされてしまう。
『お待ち下さい、今新しいフォークを…』
「あーええよ、それ使えば」
ゾム様は私の右腕を軽く持って、器用に私が使っていたフォークに梨を突き刺し食べた。
「ん…ごっそさん」
『……はい』
咀嚼が終わると、彼は何てことない顔で腕を離した。何が目的だったのか。
「気ぃ済んだし帰るわ、また来るかも？」
『次はドアからお願いします…』
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
