▼真っ直ぐな瞳の ページ27
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庭の一部を囲って作った畑は俺のテリトリーである。
我々国の幹部は皆大陸の西の出身であるが、俺だけは東の出身だった。風の便りで噂を聞いたというだけで俺を探し出したグルッペンには肝を抜かれたが、それはまた別の話だ。
昔から趣味にしていた農業を続けたくて、奴に相談を持ちかけると二つ返事で了承された。
中庭のようなガーデニングも悪くないが、やっぱり食べられる物の方が好みだ。
任務も書類処理もひと段落したので、自分の畑へと水遣りに向かう。
「あれは……」
畑の前には幹部の奴でも兵士でもなく、いつだかオスマンに連れて来られた令嬢が立っていた。名前はなんといっただろうか。
畑に入る様子でもなく、ただ黙ってもうすぐ黄金色に実るであろう稲穂を興味深そうに眺めている。
「それ、見てて面白い？」
『えっ？あ、はい』
「そっか」
俺に突然話しかけられて呆気にとられているらしかった。一国の王女ともなれば農作なんか縁のないものなのかもしれない。
誰かが来ることなど想定外だったであろう令嬢は、どうするか決めかねている様子だ。
「水遣るだけだから。気になるなら見てれば？」
『ではお言葉に甘えて』
「うん。でも畑ン中には入らないでね」
この言葉に彼女は再度、緊張した声色で返事をした。女性とはよく喋る生き物だと勝手に思っていたけど、この令嬢はちっとも口を開かない。
風に吹かれて揺れる穂先を目をきょろきょろさせて追う姿は、まるで猫のようだ。
「ねえ、令嬢」
『はいっ！』
「別に取って食べたりしないよ。君の名前さ、なんだっけ？」
『ああ…申し遅れました。A・クイント・マーレアです』
柄杓で水を飛ばす俺相手にきっちり頭を下げる辺り、彼女の国では余程マナーが厳しいのだろうか。
「Aね、俺はひとらんらん。好きに呼んで」
『ひとらんらん様…』
復唱するように名前を呼ばれ、なんだか変な気分だ。
ふと、アメジストの瞳と視線が交じわった。
「あー、Aは梨好き？」
『え？はい好きです』
「そっか。じゃあ、はいどうぞ」
熟した梨を１つもぎってAの手に持たせる。
よくよく考えたら令嬢に梨１つ渡してどうするんだ、という話な気もするが多分使用人か誰かが剥いてくれるだろう。
「あげる」
『あ、あの！ありがとうございます』
「どういたしまして？」
別に気まぐれ以外の何でもない行為だったけど、屈託無く笑って礼を言う令嬢に俺は確かな満足感を味わっていた。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
