Halloween Party 16 ページ18
彼は私の目の前でいつものようにニヤリと不敵に笑ったかと思うと、
「トリックオアトリート」
と静かな声で私に言い放った。
え?なぜ今?
訝しげに眉をひそめる私と、ニヤニヤと笑みを浮かべる彼は対照的で。
『さっきクッキー差し上げましたよね?』
と私が少し強めの口調で言えば、
「あれは企画でしょ。そんなの無効だよ」
という何とも言えない屁理屈を述べる彼。
納得はできなかったが、それでも渋々常備しているお菓子でも持って来ようかと立ち上がった…のだが。
ふとここで、昨日パーティーの準備をする中で持ち歩いているお菓子をすべて食べ切ってしまったことに気がついた。
なぜこのタイミングで、と激しく後悔をしたものの、今となってはどうしようもない。
悔しそうに唇を噛み締めながら彼を見上げれば、なぜか彼はやけに嬉しそうな顔をしていて。
「ないの?じゃあイタズラしちゃうよ?」
と意地の悪い笑みを浮かべながら、私の頬に手を添えた。
その瞬間、彼に唇を奪われて。
あまりに急すぎるキスに、私は満足に心の準備や呼吸を整えることもできず。
『…っ、』
酸素を求めて彼から唇を離れようとすれば、すぐに彼によってまた深く口付けられる。
酸欠からか彼の唇の感触からか、私の全身には次第に甘い痺れが回ってきて。
あぁもう腰を抜かしてしまうと思った瞬間、ゆっくりと彼は私から唇を離したのだった。
顔を紅潮させらながら潤んだ瞳で彼を見上げる。
彼は私とは正反対に余裕綽々といった様子で、また口元にニヤリと笑みを浮かべた。
「ごちそうさま、可愛い魔女さん」
そして彼は舌で自身の唇をペロリと舐めた。
あんなにすごいキスをしておいて、なぜ息の一つも乱れないのか。
私は悔しい気持ちを隠しきれず、顔をしかめながら彼を睨み付けた。
そんな私の視線などものともせず、彼は満足そうに頷いた後、皆のいる作業部屋へと去っていく。
今までの人生で経験したこともない特大級のイタズラをされた私は、彼によって一生忘れることのできないハロウィンの記憶を頭に刻み付けられた。
でもまぁ血を吸われないだけ良かったかな、なんて思う自分も、相当どうかしてるに違いない。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年10月28日 21時