匂わせちゃう系男子。【QK】 (ページ9)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:67,892 hit

匂わせちゃう系男子。9 ページ9

それが聞こえてきた瞬間に、私の左頬には彼の手が添えられ、今度は私の唇が彼によって奪われていた。

すぐにその状況を掴むことができなかった私は、急に呼吸が息苦しくなったことに困惑する。

懸命に酸素を求めようと彼から唇を離そうとすれば、彼はそれを許さずにまた間髪入れずにキスをして。

私の脳内は徐々にぼんやりと霞がかり、思考もまとまらない状態になっていった。

やっとのことで彼からの束縛から解放された私は、その場にぺたりと座り込んだ。

1日分のエネルギーを彼に全部奪い取られたような気さえする。

彼はそんな放心状態の私を見下ろしながら、自身の唇をぺろりと舐めた後、

「リップ、取っちゃってごめんね」

とニヤリ。

彼のその表情を見た私は、体温が急激に上昇するのが分かるくらい一気に赤面した。

彼のこういうたまに意地悪なところが、大好きで大嫌い。

いつもは私に甘えるばかりの彼が、豹変したかのようにドSになって。
そんなことをされたら私はドキドキしすぎておかしくなってしまいそうなのに、それを分かっててそういうことをするのだ。

何度もそんなことがあっても、未だに慣れることができない。
いやきっと、これから何十回何百回とあっても、おそらく慣れることなどないのだろう。

悔しいという気持ちは勿論あったが、彼に適うなんてことは万が一にもあり得ないことも分かっていた。

「行こう」

何事もなかったかのように余裕の顔で私に手を差し出す彼を、心底ずるいと思った。

だが、ここで私がいつまでも照れた様子を見せてしまえば、もう彼のこと以外考えられない状態だということを彼に教えているようなもので。

それはあまりにも彼の思惑通りすぎるので、私はささやかながらそれに反発し、しれっとした顔で彼の後に続いた。

…本当は心臓が爆発するくらいドキドキしているのに。

その後、車に乗っても顔の熱さが引くこともなく、私は運転席にいる彼に顔を見せないように、ひたすら窓の外を眺めるのだった。