匂わせちゃう系男子。2 ページ2
自宅へ戻り、荷物を再度チェックして少しだけ勉強する。
しばらくすると、スマホが一度振動したので、画面を表示させると“着いたよ”という彼からのメッセージ。
慌ててお泊まり用バッグを片手にアパートを出ると、そこにはすでに彼の車が。
小走りで助手席側に回り込んだ私は、ドアを開けて『お疲れさまです』と挨拶をしながら車に乗り込んだ。
「さっきぶりだね」
運転席には、そう言ってにこりと微笑んでくれる彼がいた。
クイズをしている時や仕事をしている時はキリッと凛々しい表情の彼が、こうしてふとした瞬間に垂れ目をさらに垂らして可愛らしい笑顔を見せてくれる瞬間が大好きで。
うっかりキュンとしてしまったのを隠すふりをして、私はガチャガチャと音を立ててシートベルトを締めるのだった。
『すみません、わざわざお迎えに来ていただいて』
私が自らのわがままについてお詫びを述べると、彼はまったく気にしていない様子で
「いや、いいよ。Aちゃんとドライブできて嬉しいし。このままごはん食べて帰ろうか」
と柔らかい口調で優しい言葉をくれた。
本当に心が広い人だなぁと感激しながらも、彼のこの優しさに甘えてばかりでは駄目だと自分に言い聞かせる。
いつだって彼は私に優しい。
自分のことは後回しで、いつも私を優先してくれてばかり。
それが嬉しくないわけではないけれど、もう少し自分を大切にしてほしいと思うことがある。
ただ、それを伝えたところで「俺はいいから」とまた笑って言ってくれるのだろうから、結局私が彼にできるのは彼に甘えすぎないということしかないのだ。
下唇をキュ、と噛み締めながら、ハンドルを握る彼の方を見つめる。
数秒後、運転しながらも彼は私の視線に気づいたようで。
口元に笑みを浮かべながら、右手でハンドルを持ちつつ左手で私の手をギュッと握ってくれた。
それだけで、私がそれまで考えていたことはすべてどこかへ吹き飛んで行ってしまったような気がした。
その後、彼のオススメだというタイ料理屋さんに連れて行ってもらい、少し辛くてでも美味しいタイ料理を2人で楽しんだのだった。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年9月16日 20時