ギュッと抱きしめて、離さないで。-izw ページ8
「Aちゃん、今日って何の日が知ってる?」
それは唐突に彼から尋ねられた。
今まで黙々と作業をしていた私にとって、まさに突拍子もない質問。
目をぱちくりさせながら必死に思考を巡らせたものの、まったく思い当たる節がない。
お付き合いをした記念の日でもなければ、どちらかの誕生日でもない。
ふくらさんのお誕生日は一昨日だったし、私にはまるで何も思いつかなかった。
『いえ、分かりません…』
小声でそう伝えると、彼はニヤッと悪戯っぽく笑ってこちらへとやって来た。
「ハグの日だよ」
私の隣に立つ彼が、さらりと答えをくれた。
だが、言われたところで私にはあまりピンと来ず。
ハグの日?
あぁ、8月9日だから?
と自分の頭の回転の遅さを実感していると、突然彼は私に向かって両手を広げた。
えーと…この手は?
という目で彼を見上げると。
「ハグの日だから、ハグしなきゃ」
至って真剣な目で私を見つめる彼が、それを述べた。
私はその胸に飛び込むこともせず、
『ハグの日じゃなくてもハグしてるじゃないですか』
と冷静にふと頭に浮かんできたことを彼に伝える。
ほぼ毎日といってもいいくらい、彼はここで私を抱きしめてくれていて。
(皆がいる前では少しは自粛してほしいという思いはあるのだが)
今更理由をつけてまでハグをしようとする、その意味が理解できなかったのだ。
すると彼は、苦虫を潰したような表情を浮かべて。
そんな彼の渋い顔を見るのは、クイズをしている時に押し負けたり不正解をしたりした時くらいなものだなぁ、なんて呑気なことを考えていると。
「…Aちゃんは俺とハグしたくないんだ」
彼が突然、唇を尖らせながら広げていた両手を下ろし俯いてしまった。
あ、まずい。
CEOが拗ねモードだ。
咄嗟に私は彼のご機嫌を取るべく、彼にガバッと勢い良く抱きついた。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年8月5日 12時