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翌日。
いつものようにオフィスでPC画面を見ながらカタカタとキーボードを叩いていると。
ふと、私の側に伊沢さんが姿を現した。
何か作業の指示だろうかと彼を見上げると、彼は私と同じ目線になるように姿勢を屈ませたのだが、その手には昨日の私のようにこんもりとハンドクリームが乗せられていて。
私が首を傾げた瞬間、彼は唐突にそれを指先ですくって私の手に塗り込んできた。
『ちょっ……え?』
事態が上手く飲み込めず、私はただひたすらに彼からクリームをぬりぬりされる。
昨日とは立場が完全に逆転していた。
訳も分からず彼の顔を見上げると、彼は物凄く楽しそうな顔をしていたのだった。
さらに意味が分からなくなってしまった私は、プチパニック状態。
今まで彼がハンドクリームをつけているところを見たことがなかったし、急にそんなことをし始める意味も理解ができなかった。
30秒ほど私の手を触り続けた後、彼は満足そうに微笑んで自席へと戻って行った。
何だったんだ?
残ったのは、シトラスの良い匂いと潤った私の手。
彼の行動を不思議には思ったが、乾燥肌な私としては嬉しいことだ。
私は特にそれを気に留めることなく、再び作業を再開させるのだった。
さらに翌日。
昨日と同じように、彼は突然私の席へとやって来て私の手に大量のクリームを塗り込んでいた。
さらにその翌日も。
彼がオフィスに来た時は、毎回。
さすがにそんなにクリームを出し過ぎるなんてことはないと思うし、何より私の手に触れている時間が回数を追うごとにどんどん長くなっていくのが気になる。
放っておくと2〜3分くらいずっと私の手を撫でたり握ったりしているのだ。
それがちょっとしたマッサージのようで、私としては願ってもないことではあるのだが、どうにも彼の意図が分からない。
その真意を確かめるべく、私は翌日彼を観察することにした。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年8月5日 12時