今日の二人【QK】 (ページ29)

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触れたいの。-izw ページ29

私はなぜか手だけ乾燥肌だ。

顔は特にカサつきを感じることはないが、手はすぐにカサカサになってしまう。

なので、梅雨時や夏といったジメッとした空気の季節ですら、ハンドクリームを塗る。

子供の頃からのことで、もう慣れてしまった。

今日も私はいつものように手を潤そうと、デスクの脇に置いてあるハンドクリームに手を伸ばした。

しかし。

『あ』

そういえばちょうど昨日使い切ってしまったのを忘れていた。
もう一回分くらい出ないかな、と頑張ってチューブをひねってみたものの、まさかの欠片も出てこず。

こんなこともあろうかと、今朝薬局に寄って買っておいた新品を鞄から取り出した。

だが、いつも愛用しているものがその薬局には置いていなかったようで。

仕方なく、香りが好みで手によく馴染みそうなものを買ってみた。

キャップを開ければ、ほんのり甘い柑橘系の香りがあたりにふわりと漂う。

いつもの花の香りがするのも好きだけど、これもなかなか良いなぁ。

そう思いながら、私はそれを手に少しだけ出そうとしたのだが。

いつもとは違うチューブの素材のせいか、力加減を誤り思いの外たくさん手にクリームが出てしまった。

あぁ、と焦りながらそれをチューブの中へ戻そうとするが、当然そんなことができるはずもなく。

私は手のひらにこんもりと乗っているクリームをオロオロしながら見つめる。

すると、ふと視界の端に恋人の姿が映った。

慌てた私はすぐに彼の元へ飛んで行き
、たくさん出た内の3分の2を指先ですくい取りながら、それを作業中の彼の手に乗せて塗り込み始めた。

驚いてこちらを見上げる彼に、

『いっぱい出てしまったので！』

と説明しながら私は懸命に彼の手にぬりぬりし続けた。

残った3分の1を自分の手に塗り込むと、ベタつかずちょうど程良く手が潤ったことに安堵する。

それでもなお硬直したまま私を見上げる彼に、突然迷惑だったかなという不安は抱いたものの、

『…これで私達同じ匂いですね！』

とごまかし笑いをする私。

もしかしたら男性は香りのするハンドクリームは苦手だっただろうかと、後になってから一瞬不安に思ったのだが、特に気にしないことにした。