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ようやく、それに気づいたようで。
彼女は慌てて手のひらで自身の胸元を覆い隠していた。
想定していた通りの反応をした彼女を俺は不憫に思うことしかできない。
彼女は少し顔を赤らめながら気まずそうに俯いていて、それがなぜか俺の目には物凄く可愛らしく映るのだった。
俺はそんな彼女の頭にぽん、と軽く手を置いて。
「雨が止んだら着替え買って帰ろう。それまでそれ着ててね」
と声をかけた。
彼女は俺の方をバッと勢い良く見上げながら、
『オフィスに戻ってドライヤーで乾かせば…』
とぽそりと呟いた。
いやいやいや、何を言っているんだ。
オフィスには何人の男がいると?
邪な心しか持ち合わせていない奴らに、万が一にも可愛い彼女の透けた胸元を見せるものか。
俺は彼女に厳しめの口調でこう言った。
「ダメ。他の奴らに見られるのだけは許さないから」
いつも彼女をつい甘やかしてしまいがちな俺だが、それだけは許すまい。
真面目な顔の俺を、彼女は口をぽかんと開けたままジッと見つめている。
どうしてこの子は普段気が利いて頭も良いのに、そういうところだけは鈍いのか。
ここまで来るといっそわざとなのではないかとさえ思えるが、なおも首をひねり続ける彼女に、俺は再び顔を手で覆った。
「…はぁ。俺のいないところでそういう無防備なのは本当にやめてね」
心の底からの願いを口にする。
すると彼女は少しだけ唇を尖らせながら、
『そんなつもりはないんですが…』
と呟いた。
「つもりはなくても、実際そうだから」
それに対しすかさずツッコミを入れる俺。
彼女は唇を尖らせたまま、不服とばかりに『はーい…』と消え入りそうな返答をした。
本当に分かっているのだろうかという疑念はまだあったものの、俺はひとまず安堵の息をつく。
そして。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年8月5日 12時