川上さんと初デートに行く話。15 ページ15
「本当に送って行かんでええの?」
『はい、それはさすがに申し訳なさ過ぎますので』
「気にせんでええのに」
彼はくしゃりと私の髪を撫でた。
私の都合で突如解散になってしまったというのに、彼の優しさに甘えて家まで送ってもらうことなんてできない。
急に彼との楽しい時間が終わりを迎えてしまったことは残念だったが、それでも彼が応援をしてくれたのだから、私は全力でそれをやり遂げようと思った。
『今日はありがとうございました。すごく楽しかったです!ペンギンも大事にしますね』
精一杯の感謝を伝える私に、彼は優しく微笑んでくれた。
「うん。またオフィスで」
彼の笑顔をしっかりと目に焼き付けてから、私は踵を返そうとした。
その瞬間。
彼はぐいっと私の左手を引き、自分の方に私を引き寄せた。
何が起きたのか分からない私は、引き寄せられる力のままに彼の方へ身体を向けさせられる。
すると。
彼の唇が、私の額に触れていた。
驚いて目を見開く私は、身動き一つ取ることができない。
突然の柔らかい感触に戸惑いながら、ゆっくりと彼の唇が離されるまで、込み上げてくる羞恥心を懸命に抑えるのだった。
彼は真っ赤になった私の顔を見てニヤリと笑うと、
「気をつけて帰って」
と告げたのだった。
だから!
なんでこの人は…!
私はそのまま後ずさるように彼からゆっくりと離れた後、電車のホームへと猛ダッシュ。
付き合ってから初めて見る彼の色んな顔にときめかされてばかり。
このままではいつ心臓が壊れてしまうか分からない。
そんなことを思いながら、私は無事帰宅し昂ぶる感情をすべてレポート作成にぶつけ、月曜日のレポート提出を完了させたのだった。
三日三晩経っても、胸の鼓動が治まることはなく。
これから自分がどうなってしまうんだろうとヒヤヒヤしながら、少しずつ彼への耐性をつけていくことを心に誓ったのだった。
あとがき(読まなくても大丈夫です)→←川上さんと初デートに行く話。14
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Annie(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、コメントありがとうございます。大事にお読みいただけて、本当に嬉しく思います。出来るだけ現実を忘れられるような、幸せなお話が書きたかったもので…。そう感じていただけて、私の方がお礼を申し上げなければならないくらいです。ありがとうございます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 後書きがある時点で今後は書かれることはないのだろう、と大事に大事に読ませていただきました。私も読みながら泣いちゃいました。このお話のkwkmさんが優しくて、消化出来ない色んな気持ちを大丈夫だよって勝手に言ってもらえたようでした。ありがとうございます。 (2020年7月2日 11時) (レス) id: f0ee8abf5f (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - ゆうかさん» ゆうかさんお読みくださいましてありがとうございました。温かいコメントをいただけて、本当に書いてよかったと心から思っています。これからも他のメンバーのお話を書いていければと思っていますので、引き続きお付き合いいただけましたら嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - 217さん» リクエストありがとうございました。絶対に今日中に書き上げなければと23:57に滑り込みで公開させていただきました。現実からかけ離れて、楽しんで読んでいただけることを願いながら書きました。宝物と言っていただけて、本当に涙が出るくらい嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました…! (2020年7月1日 7時) (レス) id: 41b5f36188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年6月30日 23時