川上さんと初デートに行く話。11 ページ11
出口にはおみやげものが売られていて、私は思わずふらふらと吸い寄せられるようにそちらに足を進めた。
今度は私が川上さんをおみやげものコーナーに連れて行くような図に。
そこでは雑貨やキーホルダーなど、海の生物をモチーフにしたグッズが多く販売されていて、私の目にはふとふわふわとしたものが映った。
『可愛い…』
先程思わず見惚れてしまった、ペンギンのぬいぐるみ。
愛らしい顔に、手触りの良い身体。
私は一瞬にしてそれに心引かれた。
『見てください川上さん、この子私に連れて帰ってほしいって顔してますよ』
「いや、してへんと思う」
ぬいぐるみを胸に抱きながらうっとりとしていると、すかさず彼の鋭いツッコミが入る。
『そんなに食い気味に言わなくても…』
不満そうに口を尖らせる私がそれを棚に戻そうとすると、
「え、何。買わんの?」
彼が驚いたような声を上げた。
『はい』
それにけろりと答える私。
いや、確かに可愛いのだ。
連れて帰りたいというのは本心。
だが、ぬいぐるみを買うのは子供っぽいのではないという思いが、私の行動を制した。
彼に大人だと思われたいわけではない。
でも、せめて子供だとは思われたくない。
ぬいぐるみを抱きかかえている時点で既にお察しではあるが、それでもなんとか自制心が働いたのだ。
すると、何やら数秒黙り込んだ彼が、ふと私が棚に置いたそれを手に取った。
私が首を傾げていると、彼は無言のままそれを購入。
何が何だか分からず、ぽかんと口を開けていた私に、彼はそれを差し出した。
「連れて帰ってほしそうやったんやろ」
その瞬間、私は天にも登るような気持ちにさせられた。
ぶっきらぼうに言い放つ彼が、心の底から愛しくて。
彼の優しさに触れ、私は思わずその場で叫び出しそうになってしまったが、なんとか口をキュッと結んだままペコペコと彼に頭を下げた。
数十秒後、心の昂りを抑えることに成功した私は、改めて彼にお礼を述べた。
『ありがとうございます!大切にしますね!』
私が満面の笑みでそれを伝えると、彼は少し照れた様子でふいっと顔を背けてしまったのだった。
彼のその様子に、私はまた彼への愛しさが募っていく。
勢い余ってうっかり私から彼の手を取り、そのままルンルン気分で水族館を後にした。
私の浮かれっぷりに若干呆れた様子の彼。
だが、なぜかその瞳は柔らかく私を見つめていて。
やっぱり私は彼のことが好きだと、改めて実感させられたのだった。
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Annie(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、コメントありがとうございます。大事にお読みいただけて、本当に嬉しく思います。出来るだけ現実を忘れられるような、幸せなお話が書きたかったもので…。そう感じていただけて、私の方がお礼を申し上げなければならないくらいです。ありがとうございます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 後書きがある時点で今後は書かれることはないのだろう、と大事に大事に読ませていただきました。私も読みながら泣いちゃいました。このお話のkwkmさんが優しくて、消化出来ない色んな気持ちを大丈夫だよって勝手に言ってもらえたようでした。ありがとうございます。 (2020年7月2日 11時) (レス) id: f0ee8abf5f (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - ゆうかさん» ゆうかさんお読みくださいましてありがとうございました。温かいコメントをいただけて、本当に書いてよかったと心から思っています。これからも他のメンバーのお話を書いていければと思っていますので、引き続きお付き合いいただけましたら嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - 217さん» リクエストありがとうございました。絶対に今日中に書き上げなければと23:57に滑り込みで公開させていただきました。現実からかけ離れて、楽しんで読んでいただけることを願いながら書きました。宝物と言っていただけて、本当に涙が出るくらい嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました…! (2020年7月1日 7時) (レス) id: 41b5f36188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年6月30日 23時