予測不能すぎる彼女の取り扱い方。5 ページ5
こうして冒頭に戻るわけなのだが。
つい先程までは幸せな時間を過ごしていた。
大好きな彼女と、2人きりで。
なのに、なぜこうなってしまったのか。
“東大最強の知識王”なんて言われて持て囃されているのに、好きな女の子の気持ち一つ理解することができない。
なんて無力な自分。
俺は頭を抱えながら、ぐるぐると思考の渦に飲み込まれていく。
だが、どれだけ考えても答えは出なかった。
なら、もう同じ過ちを繰り返さないよう間違いの原因を知るべきではないか。
白旗を上げる準備をした俺は、その場から立ち上がり作業部屋へと向かった。
予想通り、彼女はそこにいた。
自分の席に座り、デスクに突っ伏しながらすすり泣いている。
その横でふくらさんが心配そうに彼女の様子を見つめていた。
「あ、伊沢」
こういう時は、余計なことを言う前に謝ってしまうに限る。
俺は一つ息を吐き、意を決して泣いている彼女に声をかけた。
「Aちゃん、ごめんね。俺なんか傷つけるようなこと言っちゃったかな?自分じゃ全然分からなくて…」
正直に思いの丈をぶつけてみる。
その涙の理由を教えてほしいと。
だが、彼女が顔を上げることはなくズビ、と鼻をすする音だけが聞こえてきた。
隣にいるふくらさんが俺と彼女を交互に見つめ、困ったような表情を浮かべている。
巻き込んでしまって申し訳ないと、俺は彼に無言でごめんポーズをしてみせた。
何だ?何を言ってしまったんだ俺は?
彼女を傷つけるようなことは普段から思ってもいないし、思ってもいないのだから口から出るはずもない。
ゴクリと生唾を飲み込みながら、俺はひたすら彼女の返答を待ち続ける。
しばらくの沈黙の後、彼女がおもむろに顔を上げ、ふくらさんに何かを耳打ちをした。
正直、可愛い彼女が俺以外の男に耳打ちするレベルで近づくのは面白くないのだが、今はそんなことを言っていられない。
彼女から何かを伝えられたふくらさんは、俺に向かって彼女からの伝言をそのまま伝えてくれた。
「えっと、“最近自分の子どもっぽさが気になって、少しでも伊沢さんに似合う大人の女性になりたいと思い立ち、服もメイクも大人っぽくしてみたのに、当の本人から子ども扱いをされて傷ついた”らしいです」
彼が俺に敬語で話すあたり、だいぶ彼もテンパっていることを思い知り、さらに申し訳ない気持ちになってしまった。
また、彼女の本意を知り自分の何気ない一言のせいで彼女をここまで悲しませてしまったことにも。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年5月31日 20時