予測不能すぎる彼女の取り扱い方。4 ページ4
「Aちゃん、美味しい?」
彼女の表情を見れば、聞かずとも分かりきったことを敢えて尋ねてみる。
『はいっ!買ってきてくださってありがとうございます!』
彼女はフォークを握りしめてニコニコしながら返事をくれた。
俺は自分のケーキをさらに切り分け、それを彼女の口の前に持っていく。
「はい」
先程の約束通り、彼女にそれを差し出した。
彼女は少しだけ戸惑いながら、控えめにそれをぱくりと口に含む。
『こちらも美味しいですね!』
自分のものとはまた少し違う味わいに、彼女は嬉しそうに目を細めた。
ふと、ぺろりと唇を舐めた彼女の口の端に白いクリームがついてしまった。
そんなところまで愛しくて。
俺は思わずふっと微笑みを漏らしながら、彼女の口元を指先でそっと拭った。
「ついてるよ」
俺がそう言うと、彼女は慌てたような照れたような顔をして、俯いてしまった。
可愛いなぁ。
「子どもみたい」
ぽつりと呟きながら、俺が小さく笑うと。
彼女はなぜか、ひどく傷ついたような顔をして。
みるみるうちに目に涙を浮かべ出した。
その原因も分からず、俺はひたすら呆然とすることしかできなくて。
「え、?ちょ、…ん?」
思ってもみなかった突然の涙に、情けなくも慌てふためく俺。
何て声をかけるべきかも分からず、オロオロしてばかり。
そんなことをしていたら、彼女はとうとう泣き出してしまい。
『うわあぁぁぁああぁん!』
と叫びながら部屋から出て行ってしまった。
玄関ドアが開くような音はしなかったため、おそらく室内のどこかにはいるのだろうが。
それでも目前から彼女が去って行ってしまったことにも、涙の理由もまったく見当がつかないので、下手に慰めに行くこともできない。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年5月31日 20時