NO TITLE

12. ページ12

side.緑
_


出来るなら、この場から逃げ出したかった。






赤「ほんまにみんな時間大丈夫？」


黄「大丈夫やで」


赤「まぁ淳太の心配はしてへんけど」


黄「なんなん、お前」





いつも通りを装うのに必死なん、バレバレやからね。









赤「俺… さ、 ここ最近、物忘れとか酷かったやんか。 遅刻とかもあって」






聞きたくないなぁ、




この先は聞きたくない。








赤「そんでな、遅刻してもうた日の夜に神ちゃんに呼び出されたんよ。 心配やから、明日病院行こうって」





楽屋の中は収録前と打って変わって、耳が痛くなるほど静かやった。




喋ってるのはしげだけ。









赤「昨日、検査結果が出てん。 ……… 若年性 、アルツハイマーやって言われた」






言葉の最後の方のしげの声は震えていた。








赤「これからのこと、みんなで話し合えって」


桃「待って… 俺、頭ん中ぐっちゃぐちゃや。 手術とかでなんとかなるんよな…っ？」





のんちゃんは泣いてて、他のみんなは固まってる。






俺もそう。





言葉なんか、出てくるわけがない。









赤「手術でどうにかなる問題ちゃうねんて。 薬なら少しは進行を遅らせることも出来るみたいやけど、それもどうせただの気休め程度にしかならへんらしいわ」


桃「そんなっ… じゃあしげは、」


赤「俺は 、時間が経てば経つほど何も出来んくなって…っ、 友達、事務所の先輩、後輩、 メンバーのみんなのこと、家族のこと。 終いには、自分のことさえも誰か分からんようになって…っ 、 少しずつ 、少しずつ記憶が消えていくんよ……っ！」


桃「っ… 嘘や、 そんなんっ 、絶対嘘や…っ！」







相変わらずのんちゃんは泣いていて、しげも涙を流してる。





そして、









黄「っ、ごめん。 ちょっと席外すわ」






淳太は楽屋から出て行ってしまった。

13.→←11.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す