まぶしいもの ページ24
.
わたしはまた、自分の感情が鉛のように凝り固まってつめたくなっていくことを感じた。
麻結はすなおだ。
彼女は何ひとつわるいことを言っていない。
「あーもうっ、お姉ちゃんかわいいから麻結は心配なんだよー!」
「……麻結に言われたくないんだけど」
「ねえ、お姉ちゃん?毎回言ってるけど、お姉ちゃんってほんっとに魅力的なんだからね?もうね、他とはオーラがちがうの。ほんとにほんとに自覚持ってよ?」
わたしより背の高い麻結にぎゅうぎゅうと抱きしめられれば、当然息が苦しい。
甲高い声をあげて"わたしの素晴らしさ"について熱弁する妹は、すなおで、やさしくて、心から人をあいして、
「も、わかったから…………ありがとう」
わたしは麻結のことが大好きだ。
彼女の姉に生まれてよかったと、これだけはほんとうに、心の底から思う。
.
週末。
この日は部活の地方大会の初戦だった。
わたしはベンチではなく、スタジアムの客席から試合を観戦する。
隣には、三崎さんが座った。
彼は宣言通り、生徒たちの応援に来てくれていた。
「快勝だったな」
「うん……これなら順当に上がれそうだね」
白いプリントのトーナメント表を見ながら、そこに一回戦突破を示す赤い線を引く。
「Aさん、気分悪くなったりしてない?」
三崎さんは言った。
降り注ぐ日にまぶしそうに目を細めながら、まだつめたさの残るスポーツドリンクのペットボトルをこちらに寄越す。
―女の子はみんな、だれかに愛されるために生まれてきたんだから―
――――わたしは知っている。
そのためには、まずは自分がだれかをあいさなければならないこと。
だけど、わたしには――…そういった感情が、いちじるしく欠けてしまっているように思う。
他人に対して、あまり興味を持てないのだ。悪気はなく。
「……大丈夫」
「そっか。よかった」
監督や先生方に挨拶をしに向かうため、観客席を出る。
ちょうどスタジアムから出てきた選手たちは、試合に出ていた子もそうでない子も、皆一様に汗で濡れていた。
その粒のひとつひとつが光に反射して、とてもきれいで、まぶしかった。
彼らはまだ、ほとんどまっさらな状態なのだ。
「三崎先輩、水無月先生狙ってるんすか」
「お前、いろいろ顔に出てるぞ」
キャプテンの須藤くんや相野監督にからかわれ、三崎さんは苦笑いを浮かべている。
703人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…!本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします! (2018年9月28日 0時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます! (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べに | 作成日時:2018年9月11日 21時