誰かにあいされるため ページ23
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目玉焼き、ウィンナー、アスパラガスのベーコン巻き、オニオンスープ。
それらをせっせと運ぶ麻結は、チェック柄の空色のエプロンがよく似合っている。
姉妹の部屋で、食事の担当は彼女のほうだった。
わたしは当然、まったくと言っていいほど、家のことができないから。
「お姉ちゃんはスポーツバカだよねえ」
と、いつか麻結が言っていたことを思い出す。
「本当にそうって意味じゃなくて、気質がってことね。ほら、麻結は昔から運動は好きじゃなかったけど、お姉ちゃんは得意だったでしょ？
なんていうかたぶん、根本が違うんだろうなあ。
ぼんやりと人生をたのしんでる麻結に対して、お姉ちゃんはなんか、突き詰めてる感じがするよね」
わたしは未だかつて、麻結が『ぼんやりと』生きているなどとは、思ったことがない。
ぼんやりしているのはむしろ、わたしのほうなのだ。
昔からずっと。
「……お姉ちゃん？」
朝ごはんを食べ、キッチンで食器を洗っていると麻結がどこか神妙な声でわたしを呼んだ。
「ん？」
振り向けば、朝日に照らされた美しい顔が哀しそうに眉を下げている。
爪先ひとつまできれいな麻結の長い指。
それが、わたしのうなじを撫でるように触った。
そこには、昨晩の最中に男に掴まれた爪の痕がくっきりと残されていた。
麻結は俯き、弱く背中に抱きついてくる。
弱く。
「麻結、心配してるんだよ」
「…………」
「お姉ちゃん、いつか壊れちゃいそうなんだもん」
いつか、壊れちゃいそう――――
――――妹にそう告げられたのは、いつが初めてだったろう。
そのたびに彼女は震えていた。
本気で、まじめに、心の底からそう思っているのだろうと、充分に伝わる。
麻結は恐れているのだ。
たぶん、きっと、わたしが泡のように消え去ることを。
沈黙に息をひそめたままでいると、細い手に両肩を掴まれた。
麻結の大きな目が、決意のようなものに満ち満ちていた。
「お姉ちゃん。ちゃんと自分を大事にしなきゃだめだよ」
「……麻結」
「女の子はみんな、だれかに愛されるために生まれてきたんだから」
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
