彼女の日常 ページ12
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週明け。
日が照りつける、容赦のない光はまぶしいが、季節はまだ春だ。
職場――――ノスタルジックな机がきっちり並べられた、正方形の部屋――――の窓越しに見る空は、都会のビル群を水色に染める。レースみたいに。
「今日はここまで。このプリント、次の授業にも持ってきてね」
長い50分が過ぎ、チャイムが鳴る――…
途端にさわがしくなる教室、寝ていた生徒や携帯を触っていた生徒も動き出し、あの思春期の子ども特有の、みずみずしい気配で空気が満ちていく。
「せんせー、宿題はー？」
「ないよ。
わたし、課題って世界一きらいなの」
ここでのトレードマークになりつつあるゆったりとしたミルク色のワンピース、それに散ったチョークの粉を払い、部屋を出る。
背後から、きこえる――――
「A先生って先生らしくなくて、いいよね」
「ねー、怒られないもん」
ざわざわと、生徒たちのつくる雑踏の中、明るい廊下を進んでいく。
クラブ生の威勢のいい挨拶に笑顔を返しつつ、抱え持ったプリントの束とともに、次の教室へ向かう。
都内の私立高校の、国語科教師。
それが、わたしの仕事だ。
「あ、先生。次も授業ですか？」
「はい、４組で。退屈な枕草子の解説です」
わたしは今の職場を、良いとも悪いとも思っていない。
良いと思えるほど教師という職に誇りを持ってはいないし、悪いと思うほど、この仕事に興味を持っていなかった。
「じゃあ、教科書23ページ……」
現代文の教師とは違い、古典を担当するわたしはあまり忙しくない。
名前は正規教員だけど、実際学校からの扱いは非常勤講師に等しい。
職員室に居場所はなく、デスクは図書室の裏の司書室だし、実際細やかな会議には呼ばれないことだってある。
それでも書類上は正規の職員だから、副担任の仕事だって回ってくるし、顧問にも就かなければならない。
まったく不当な扱いだ。
「部活、行ってきます」
デスクの上を片し、部屋の隅のホワイトボードに『グラウンド』と書き示す。
職員専用の更衣室に立ち寄ると、ジャージに着替え、スニーカーに履き替えて校舎を出る。
日が傾いて景色が赤く染まっていた。
涼しい風の中、整列してランニングをする練習着の生徒たちを横目に、わたしはテントの下で話し合うコーチ陣の元へ足を進めた。
【男子サッカー部】
青いテントには、そんな文字が白く光っている。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
