硝子の涙 7 【OS 】

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〜翔side〜

・


「俺さ？ずっと今まで、翔くんに
甘えっぱなしだっただろ？
孤児院で出会った時からずっと」





何を





「俺ももう20歳越えて…やりたい事も見っけて。

良い節目だと思うんだ。 いつまでも、この家で
優しい幼馴染に縋ってたら
俺、きっといつか耐えらんなくなって
結果的に翔くんに迷惑掛けちまうと思うんだ」




言ってるの




「この家程じゃねぇけど
それなりに良い物件も見つけたんだ。

今までは、親父さんの脛を齧らせて
頂いてた様なモンだからさ」




気が動転しすぎて


声すら出せないでいる俺を他所に
淡々と言葉を紡ぐ彼


よく見ると、彼の椅子の背後には
初めて目にした茶色のスーツケースが佇んでいて


普段は、ポシェット1つで海外にも移動出来る
彼が持つ量ではない、その荷物が

現実から目を背けようとしている俺に
追い打ちをかけてくる様で


朝まで机上に並んでいた青のマグカップ


彼と並んで写っているはずの手作りの写真立て。

リビングに大きく飾った、彼から貰った
芝桜の絵


たったの数時間の間に


『彼』が感じられる形跡は跡形もなく消えていて


その閑散とした光景に

心臓が、捻り潰される感覚に陥った




最近、智くんが1人で出掛けたり
帰りが遅かったのは



一人暮らしをする為の家を探してたってこと、？



だって、そんな事


俺には


一言も＿＿＿＿＿



「なっ、んで…どうして急に…

俺、あなたになんかしちゃった…っ？」



傍で輝き続けてくれる一等星


あなただけは


ずっと、消えない星だと思っていたのに



嗚咽と、こみあげてくるキリキリとした胃痛に
耐えながら、漸く機能した喉で訴える様に聞くと

智くんは清々しく笑いながら首を横に降った



「違うよ、翔くん。これは俺のケジメ。

正直言っちまうと、さ」



「もう、限界なんだ

翔くんとの この関係が」




涙さえも出てこなかった



お風呂であったまった筈の身体が
指先から徐々に冷えて

次第に感覚も無くなっていく



俺が知らない間に、鬱憤が溜まっていたのかな



家事が出来ないから、？

寝相が悪いから、？



いくら、彼が否定してくれていたって

俺と暮らす事で

彼がプラスになるような事を
ひとつでもした覚えがない今


引き留める術も資格もなくて


ただ、ただその鷲色の瞳に縋りたくなる
想いをぶつけるしかなくて




底のない闇に突き落とされたまま



身動きが取れないでいた

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